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2008年1月26日 (土)

TRIO KT-7700 調整記録

Trio_kt77000_3  1977年頃から我家にずっといるKT-7700です。何と30年前の製品で、当家最古のSONY ST-5130に次いで2番目に古いチューナーです。KT-7700に関する詳しい製品情報は国内サイトでは見つかりません。TRIO製品の中にあっては中級機扱いなので仕方ないことでしょうか。一方輸出モデルの「KT-8300/KT-9900」はTICで良い評価を受けています。KT-8300は正面パネルの色がシルバー、KT-9900は欧州向けでブロンズ色の違いがあるようです。

※輸出モデルの型番が国内向けモデルと極めて紛らわしいのでご注意ください。以下の記事に登場する「KT-8300/KT-9900」はすべてKT-7700の輸出モデル名を意味します。

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■KT-7700に関する情報

【KT-7700に関する前回記事】 2006/10/22(LED交換、仕様一覧表、取扱説明書PDFファイル)
 http://bluess.cocolog-nifty.com/labo/2006/10/trio_kt7700_led_1bee.html

【KT-7700掲載カタログ紹介】 2006/12/07(1976年版カタログPDFファイル)
 http://bluess.cocolog-nifty.com/labo/2006/12/trio_1976_c884.html

【Tuner Information Center (TIC)】 ※KT-8300サービスマニュアルあります。
 http://www.fmtunerinfo.com/kenwood.html

【MPB's Audio Projects】KT-8300改造記事あります。
 http://mpbarney.googlepages.com/home

【FMtuners / High End FM Tuners】Yahoo Group
 http://tech.groups.yahoo.com/group/fmtuners/

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■調整記録

Trio_kt77003  cooltune様のサイトでKT-7700の輸出モデルがKT-8300(KT-9900)という情報を得てTICで調べたところ、輸出モデルの調整法が記載されたサービスマニュアルや回路図が入手できました。「ついにこの日が来たか・・」という感慨に耽りながらKT-7700の内部に手を入れました。KT-8300(KT-9900)サービスマニュアルとKT-7700を詳しく照合すると両機は同一機ではないことが判明しました。

・KT-7700 FM専用 FM7連バリコン搭載(ユニット番号:X01-1230-00)
・KT-8300 FM/AM  FM6連バリコン搭載(ユニット番号:X01-1220-10)

Trio_kt77004  AM機能の有無が違います。上記のようにバリコンを載せたユニットが異なるので、トラッキング調整は「ANT」「RF1」「RF2」「RF3」「RF4」「RF5」の6ヶ所になります。ただしフロントエンド以降のFM部ユニット(X05-1350-10)は同一なので、ここでの調整項目はそのまま使えます。具体的な調整方法はサービスマニュアルをご覧いただくとして、ここでは調整作業の印象のみ書き留めます。※精度の怪しい中古測定機器を使って調整している点は差し引いてご覧ください。

KT-8300サービスマニュアルにKT-7700関係事項を加筆したPDFファイル(約2.3MB)

・トラッキング調整のズレはごく僅か。
・TP1で測定するIF TRIGGERとIF TRIGGER LEVELはズレが大きめ。
・TP2で測定するVCO(19kHz)はほとんどズレなし。
・セパレーションのズレが大きく、調整による改善効果が絶大!

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■テストポイント「TP1」「TP2」の位置について

Trio_kt77005 「テストポイントの位置は回路図を参照せよ」というサービスマニュアルの指示に従って回路図上で「TP1」「TP2」を探しました。回路図とにらめっこ状態になって約1時間。「TP」という場所は発見しましたが「TP1」と「TP2」が見つかりません(汗)。老眼の目には厳しい作業です(涙)。日を改めて再度約1時間に渡って回路図を探索しました。やはり「TP1」と「TP2」が見つかりません。さすがに「これはおかしい!」と思い始めました。気付くのが遅すぎますか・・(笑)

Trio_kt77006  「TP2」はVCO調整(19kHz)ですからICg12の10番ピンに繋がった「TP」の位置で間違いないと思います。実機の基板ではR184(100KΩ)の足が計測ポイントで、周波数カウンタで19kHzが測定できました。「TP1」はIF出力を測定しているので、回路図上で「IF TRIGGER」と書かれたVRg2近く「b」上側の「●」ではないかと考えました。ただ基板上にはフックやテストピンが見当たりません。試しにVRg2に繋がったRg77(22KΩ)の足に直流電圧計を接続したところ指示された設定値に調整することができました。実機での調整はVRg2~Rg77間にあるジャンパ線がベストポイントだと思います。

Kt8300kt7700servicemanual_p16 このテストポイントが正しいかどうか不安があったので、この件について【FMtuners / High End FM Tuners】Yahoo Groupの過去ログを調べてみました。テストポイントの場所について過去に同じ議論がされていて、やはり回路図に「TP1」と「TP2」の記載は無いとの結論でした。調整に用いる実際ポイントも私の判断と同じでした。

 KT-7700の国内版サービスマニュアルをお持ちの方がいらっしゃいましたら、マニュアルと回路図でテストポイントの件をご確認いただけると嬉しいです。

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■KT-7700の検波方式について

Trio_kt77001_2 「マルチプリケーティブ ディスクリミネーター」って何でしょう? cooltune様は「名称からしてたぶんクォドラチャー検波の改良型では・・」と述べられています。実機では検波回路がパッケージ(型番:W02-0005-05)になっているので内部の様子が分かりません。さすがにこれを分解する度胸はありません・・。弟機のKT-7500は「クォドラチャー検波」であるとカタログに明記されています。サービスマニュアルの記述に「phase shifter」「multiplier」とありますから、やはりクォドラチャー検波の一種と考えて良さそうです。「wave shaping circuit」の意味はよく分かりません。

【サービスマニュアルから引用】
 The detector circuit is assembled into a unit(W02-0005-05). It is a wide-band detector circuit of multiplicative detection system. The system is composed of phase shifter, wave shaping circuit, and multiplier having a low distortion characteristic. The detection band width is 5MHz and a low distortion characteristic of 0.04% is realized over more than 1MHz range. SN ratio is more than 85dB.

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■試聴

 調整前後で受信性能はそんなに変わらない印象ですが、セパレーション調整の効果ははっきり分かります。セパレーションをしっかり調整するためには検波段の調整が重要。調整作業にはサービスマニュアルに示された設定電圧などの情報がとても役に立ちます。ヘッドホンの中で楽器の位置がしっかり定まる感じがVery Good!低音域も力強くなった印象です。出力段にある16kHzの立派なLPFを見れば、スペクトルの状態は納得できます。前回評価「○」を「◎」に変更します。

Swkt7700
7kt7700_2

【アナログチューナー比較記事】
 http://bluess.cocolog-nifty.com/labo/2007/11/post_9fa9.html

 今回の作業でTPを探すために回路図と真剣に向き合った数時間・・とても勉強になった充実の時間でした。

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■追記(2008年2月2日)

 調整記事の公開後、cooltune様より「無線と実験」1976年5月号に掲載されたKT-7700回路図コピーをお譲りいただきました。ありがとうございました。

※以下に登場するKT-8300/KT-9900とはKT-7700の輸出モデル名を意味します。ご注意ください。

 KT-8300/KT-9900は海外仕様機です。FM放送のプリエンファシスは日本とは違いますから「75μs/25μs」の切替スイッチが背面に付いています。KT-8300の回路図を見ていくと切替スイッチもちゃんと記載されています。私の手元にあるのは国内仕様のKT-7700ですからプリエンファシスの切替スイッチはありません。日本のFM放送は50μs固定ですから当然ですね。

 「あれ~?」

Kt770033  写真の通りKT-7700のメイン基板は(X05-1350-10)でKT-8300の回路図に掲載されたユニット番号と同じです。でもKT-7700のディエンファシス回路がKT-8300と同じはずがありません。抵抗とコンデンサが違うはず!おまけにcooltune様からいただいた回路図を見るとメイン基板は(X05-1350-01)となっています???という事でKT-7700実機・KT-7700回路図・KT-8300回路図とのにらめっこ状態に再度突入しました(笑)。

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■比較して分かった事

Kt770034_3 【KT-7700実機にある】→【KT-7700回路図にない】
・ICg12の8ピン、9ピンとQg20の間にある0.01μFのコンデンサー(基板裏面に直付け)
・このコンデンサーはKT-8300の回路図に記載あり(部品番号なし)

【KT-7700実機にある】→【KT-8300回路図にない】
・Icg13近くのコンデンサーCg105、Cg106
Kt770035・KT-7700回路図ではCg105→Cg118、Cg106→Cg119と記載あり

【KT-8300回路図にある】→【KT-7700実機にない】
・Flg6(16kHzのLPF)に入る直前にCg116とCg117
・Flg6(16kHzのLPF)を出た直後のRg125とRg126

Kt770036Kt770037 【KT-8300回路図】【KT-7700実機】で部品が異なる
・Rg129、Rg130:2.7K→1K
・Rg133、Rg134:120K→33K

※その他見落としはあるかもしれません。ご容赦を・・

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■結論

・輸出用基板(X05-1350-10)に国内用部品(X05-1350-01)を搭載して製造
・製造後の製品改良のため基板裏面にコンデンサー2個を追加

 大量生産されたのではなく、一台一台ていねいに組み立てられた製品のような気がします。これからも愛着を持って大切に使い続けます(感謝)。

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コメント

こんばんわ。約1年振りにコメントします。
さて、今回の調整記事大変興味深く拝見しました。
輸出仕様のサービスマニュアルにはTP1、TP2の記載は無いとのことでしたが念のためと思い確認したことろ昨年ケンウッドサービスの方にいただいた「国内版」の回路図には
ICg12の横に「TP2」が、またIF TRIGGERの横に「TP1」が印刷されています。
使い方も判らず保管していましたが、今回やっと日の目を見ました。ありがとうございました。
もっとも調整機器が無い状態なので。。。

 ちなみに、貴殿の開発した高周波数の聴力テストで何と
14000HZ以上聞き取れないことが判ったので大変ショックを受け、それ以降「高域の伸びが・・・」との話を聞くのが怖くなりました。
年齢のせいなのか、それとも「高域難聴」なのか?

今後も研究成果の継続的開示を是非お願いします。

投稿: shibataya1961 | 2008年1月27日 (日) 22時06分

拝見しましたが凄い力作でBLUESSさんの苦労と喜びが伝わってきました。

shibataya1961さんの回路図にはTP1とTP2の記載があるそうですが、無線と実験に掲載された回路図ではTPだけでした。
サービスマニュアルが改訂されたか追補があったのでしょう。

「マルチプリケーティブ ディスクリミネーター」については雑誌に簡単な解説がありました。
探し出せないのですが(MJ誌の1976年2,3,5月号には載っていませんでした)クォドラチャー検波の改良型とあった気がします。
未整理の山の中に埋もれているはずですので見つけたら報告します。

セパレーション調整は私も効果に驚いたことがあります。
検波器より後の調整は聴感で分かり易いためでしょうけど、耳も素直なのかいい加減なのか分からないですね。

投稿: cooltune | 2008年1月27日 (日) 23時40分

shibataya1961様

国内版回路図にはTP1とTP2が印刷されているのですね。

貴重な情報をありがとうございました。

投稿: BLUESS | 2008年1月29日 (火) 17時01分

cooltune様

回路図の件、ありがとうございました。

投稿: BLUESS | 2008年1月29日 (火) 17時06分

回路図はフロントエンドのご参考にと思ったのですが、綿密な調査をされたようで脱帽です。
もっとも実機を持っていると些細な点も気になってきますね。
回路図と実際は違うことはよくあります。
もしかしたら国内向けKT-7700でも製造時期によって違うかもしれません。

「75μs/25μs」スイッチは Dolby FM のための切り替えだと思います。
(別の機種では「75μs/50μs」スイッチで地域別の違いを切り替えるものがあります。)

ラジオ技術誌1976年8月号にトリオの松塚さんという方の6ページの解説記事がありました。
マルチプリケーティブ検波方式とは「ベッセル形の遅延器、波形整形回路、掛算器からなり・・・(中略)・・・波形整形回路は方形波にするためのもの(以下略)」だそうです。
同誌76年6月号には黒川晃氏の解説記事がありますが検波についてはクォドラチャー検波の一種とだけしか書いてありません。
電波科学誌78年11月号p.116にはクォドラチャー検波の移相器の代わりに遅延器を使ったものとありこれが一番簡潔な説明のようです。

投稿: cooltune | 2008年2月 3日 (日) 22時55分

cooltune様

貴重な資料から詳細な情報をご提供いただき誠にありがとうございます。
すごい蔵書ですね・・

カタログには性能を誇張する宣伝文句(難しいカタカナ専門用語)が並びますが、
回路図と実機を見比べながらその意味を確かめる作業は結構楽しいものです。

今回の一連の作業はとても良い勉強になりました。
ありがとうございました。

投稿: BLUESS | 2008年2月 4日 (月) 22時24分

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