・2025年11月、久しぶりに見るS707X故障機が届きました
・本体を揺らすと中から「カラカラ」と音がするそうです
・それって部品が外れて危ないんじゃないの??
・以下、作業記録です

■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 SANSUI TU-S707X 54,800円(1984年)
・オーディオ懐古録 SANSUI TU-S707X 54,800円
・Hifi Engine TU-S77X Quartz PLL Digital Synthesizer Tuner
■内部確認--------------------------------------------------
・本体を左右に傾けると確かに内部から「カラカラ」と音がします
・明らかに何かの部品が転がっている音、しかも複数ある感じです
・電源を入れる前にまずボディを開けて音の正体を確認しなければ、
・正面から見て右側【RF+IF基板】、左側【MPX基板】
・電源基板は左側面に横向きに張り付いています
・底板を外すと割れた黒いプラスチック部品が複数出てきました
・これはフロントパネルや基板をボディに固定するツメ部品です
・どうやらフロントパネルを外そうとした先人がいたようです
・強引に外そうとしてツメ部品を破損したのかな?と想像できます
・分解方法はサービスマニュアルにちゃんと記載があるのにね
・この影響でフロントパネルが固定されていない状態でした
・このままではフロントがグラグラ状態なので強力接着剤で固定
・接着すると本当にもう分解できなくなるのでその前に、
・念のためタクトスイッチをクリーナー液で全数洗浄しておきました
・基板上の部品、ハンダ面とも目視で修理痕がないことを確認
■動作確認--------------------------------------------------
・外観は経年の汚れが目立ちますが幸いなことにヤニ汚れなし
・光沢あるサイドウッドもほぼ無傷でした
・異音の原因が分かったので電源を繋いで動作確認開始
・FM/AMとも周波数の表示OK、輝度劣化や文字痩せは見られない
・UP/DOWNボタンに反応して周波数が上下に変化する
・RFセレクタ、IF切換に応じてインジケーター点灯
・REC CALトーンOK、メモリ登録OK、タクトスイッチが軽快に反応する
・ただオート選局で名古屋地区のFM局をすべて素通りして受信不可
・マニュアル選局でも全区間で受信不可、聞こえるのは局間ノイズのみ
・「ザー」というノイズだけでFM放送は全く受信できない状態でした
・続いて適当なループアンテナでAM放送の受信テスト
・名古屋地区のAM放送も全く受信不可でした
・これは電源回路の異常か?PLL回路の異常か?
■修理記録:基準周波数7.20000MHzが不安定--------------------
【VT電圧確認】
・フロントエンドVT端子 → 電圧計接続
・90.0MHz → TC5調整 → 0~20vで激しく変動する
・76.0MHz → 90MHzと同様に0~20vで激しく変動
→VT電圧が0~20vの範囲で激しく変化して安定しない現象を確認
→この原因は基準周波数7.200000MHzが不安定に変化することでした
【基準周波数調整】
・コイン電池横 R10 右足 → 周波数カウンタ接続
・TC1(緑色)調整 → 7.200000MHz
・基板上で一番大きいLSI:TC9417BPを駆動する基準周波数7.200000MHz
・これを微調整するトリマコンデンサTC1(緑色)です
・このトリマ内部の接触不良が原因でVT電圧が安定しないと判明
・回路図を見るとTC1容量=45pF
・本来なら即交換ですが、、この容量の手持ち在庫がない
・そこで今回はエレクトロニッククリーナー洗浄で復活させました
・クリーナー液をTC1に噴射した後で何度も回転させる
・最後にエアダスターを噴射して乾燥させる
・これで周波数が安定し、TPで観測するVT電圧が正常化しました
・劣化したトリマコンデンサはこの方法で復活することがあります
■修理記録:OSCトリマコンデンサ交換-------------------------
・上記作業でVT電圧は安定したのですが、
・今度はフロントエンド内TC5を回しても電圧が変化しないことを確認
・76.0MHz → 1.6v
・90.0MHz → 8.2v ※本来は20v前後のはず
・これはこの機種定番のTC5の故障で確定です
・このTC5は上記緑色TC1とは形状が異なり洗浄しても復活しません
・ユニット本体を取り外し、TC5を10pFの新トリマに交換しました
・交換後の再調整でFM受信が正常になりました
■調整記録--------------------------------------------------

【基準周波数調整】
・コイン電池横 R10 右足 → 周波数カウンタ接続
・TC1(緑色)調整 → 7.200000MHz
【VT電圧確認】右側RF基板
・フロントエンドVT端子 → 電圧計セット
・90.0MHz → TC5調整 → 23.0V
・76.0MHz → 3.3V
【FM同調点の調整】右側RF基板
・TP1-TP2 → 電圧計セット
・83.0MHz受信 → TC(右)調整 → 電圧ゼロ
・83.0MHz受信 → TC(左)調整 → 高調波歪最小
【フロントエンド調整】右側RF基板
・IC3[HA12412] 13pin → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83.0MHz受信 → TC1,TC2,TC3,TC4調整 → 電圧最大
・上記作業を数回繰り返す
※コイルL1,L2,L3,L4の間隔調整は難しいのでパス。
・83.0MHz受信 → フロントエンド内IFTコイル調整 → 電圧最大
【IF調整】右側RF基板
・IC3[HA12412] 13pin → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83.0MHz受信 → T1調整 → 最大電圧
【WIDE/NARROWレベル調整】右側RF基板
・IC3[HA12412] 13pin → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・IF BAND=NARROW
・83.0MHz受信 → 電圧測定
・IF BAND=WIDE
・83MHz受信 → VR2調整 → NARROW時と同じ電圧
【FM LOCKED LEVEL調整】右側RF基板
・83.0MHz 30dB受信 → VR4調整 → 本体正面[LOCKED]橙色LED全灯
【MUTING LEVEL調整】右側RF基板
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83.0MHz 20dB受信 → VR3調整 → MUTING作動位置
【AUTO STOP LEVEL調整】右側RF基板
・83.0MHz 30dB受信 → VR1調整 → オートサーチが有効な位置
【REC Level】右側RF基板
・VR5調整 398kHz -6dB
【VCO調整】左側MPX基板
・TP3[VCO] → 周波数カウンターセット
・83.0MHz 無変調 → L101調整 → 304kHz
・TP1-TP4 → 電圧計セット
・83.0MHz 無変調 → VR105調整 → 電圧0V±0.05V
・TP2-TP5 → 電圧計セット
接続 → VR104[PILOT OFFSET]調整 → 電圧0V±0.1V
【PILOT CANCEL調整】左側MPX基板
・音声出力 → WaveSpectra接続
・83.0MHz ST受信 → L100、VR103L調整 → Lch 19kHz信号最小
・83.0MHz ST受信 → VR106、VR103R調整 →Rch 19kHz信号最小
【セパレーション調整】左側MPX基板
・音声出力 → WaveSpectra接続
・IF BAND=WIDE
・83.0MHz ST受信 → VR102L調整 → 漏れ信号最小
・83.0MHz ST受信 → VR102R調整 → 漏れ信号最小
・IF BAND=NARROW
・83.0MHz ST受信 → VR101L調整 → 漏れ信号最小
・83.0MHz ST受信 → VR101R調整 → 漏れ信号最小
【AM調整】右側RF基板
・ 522kHz → TC1調整 → 1.3v
・1611kHz → T1調整 → 18.0v
・LA1245-16ピン → 電圧計セット ※AM Sメーター電圧
・ 729kHz NHKラジオ受信 → T2調整 → 電圧最大
・1332kHz 東海ラジオ受信 → TC2調整 → 電圧最大
・AM VR1調整 → AM STOP LEVEL
・AM VR2調整 → AM SIGNAL
※本機のAM回路にあるTC1とTC2も念のため洗浄しておきました

■試聴------------------------------------------------------
・HA12412によるクアドラチュア検波ながら高調波歪が極小優秀です
・そしてSLDD効果でセパレーション値は70dBに迫ります
・後継のTU-α707シリーズは【PLL検波+LA3450】に進化しましたが
・薄型ボディにでSLDD回路を詰め込んだ TU-S707X も優秀機種です

■MPX回路 SLDD 考察----------------------------------------
【SLDD】
・TU-S707Xの最大の特徴は本体底面積の半分を占める大きなMPX基板
・ここにディスクリートでMPX回路が構成されていることです



・キチンと調整するとセパレーション値は軽く60dBを超える超高性能
・これを実現しているのがSANSUIオリジナル技術の SLDD です
・TU-S707XやTU-α707のフロントパネルにある SLDD のロゴがその証
・SLDD:Super Linear Digital Decorder
・技術解説文書はこちら(英文PDF)→
・実はSLDDについて調べた記録が残っています
・過去記事:2008年5月11日
・後継のTU-α707も SLDD のロゴがありますがMPX回路はLA3450搭載です
・つまりTU-S707XのMPX回路を集積したICが LA3450 だと言えます
・基板一枚分のディスクリート回路が LA3450 に凝縮された訳です
【WODSD】
・SONY ST-S555ESX にも同様にディスクリート構成のMPX回路があります
・SONYでの呼称は WODSD:Wave Optimized Digital Stereo Detector
・後継の ST-S333シリーズも WODSD 搭載を謳っていますが
・MPX回路は CXA1064 というICに置き換わっています
・333シリーズでは CXA1064 に代えて LA3450 が搭載された個体もあり
・つまり CXA1064 = LA3450 、SLDD = WODSD と言えると思います




・両社の資料を比べるとサンスイの方が2年ほど先行していたようです
・サンスイと言えばアンプのイメージが強いのですが
・チューナー回路でも最先端を走っていたと言えます
・当時はそんな技術情報など全く理解できない自称オーディオ通でした
・アンプはサンスイかパイオニア、チューナーはトリオ、とか言ってね
・製品カタログに並ぶ魅力的な宣伝文句に惹かれて選んでいただけでした
・有名オーディオ評論家が執筆する記事にも大いに影響されていました
・古い技術情報を発掘しながら、今になって理解が追い付ている状況です
・当時のエンジニ方々アの努力に敬意を表し、ありがたく使わせていただきます
■note:BLUESS Laboratory
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