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TRIO KT-900 修理調整記録6

 ・2024年11月、HOジャンクコーナーでKT-900ジャンク品に遭遇しました
 ・プライスタグに「FM受信不可」と書かれていますが
 ・まあ、故障個所は大体想像できるかな、、
 ・AMループアンテナ付属、それだけで元が取れるお値段でした

Kt90003_20250112085801

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 TRIO KT-900 ¥49,800(1980年頃)
 ・<>a href="http://knisi2001.web.fc2.com/kt-900.html"オーディオ懐古録 TRIO AM-FM STEREO TUNER ¥49,800円(1980)
 ・Hifi Engine Kenwood KT-900 AM/FM Stereo Tuner (1980-82)

Kt90002_20250112085201Kt90016_20250112085201

■動作確認--------------------------------------------------

 ・天板に擦り傷多いが、縦置きされていなかったので側板はほぼ無傷
 ・強化ガラス製のフロントパネルも無傷、しかもパネルの前傾なし
 ・電源オン、周波数窓の照明点灯、ダイヤル指針の照明点灯
 ・機能切換状態を示す緑色インジケーターもすべて点灯
 ・さて、名古屋地区のFM放送局を受信しようとすると、、
 ・76MHz~90MHz全区間で局間ノイズしか聞こえない、
 ・シグナルインジケーター点灯しない、全く受信不可
 ・REC CAL トーンに切り換えても基準音が聞こえない、無音です
 ・AMループアンテナを接続してAM放送も受信確認
 ・プライスタグの情報は本当でした、、

■内部確認+修理記録:バリコン軸の洗浄----------------------

 ・底板を確認、KENWOODサービスによる修理歴シールは見当たらない
 ・内部を見ても部品を交換した痕跡は見当たらない
 ・フロントエンドのバリコン軸を見ると緑青サビが盛大に湧いている
 ・たぶん相当長期間使われずに放置されていた個体かな?
 ・最近はバリコン軸の清掃に100均で買える歯間ブラシを愛用しています
 ・これである程度こそぎ落としてからエレクトロニッククリーナー洗浄
 ・最後にコンタクトグリースを薄く塗布して何度も往復させる
 ・洗浄完了ですが、受信確認するも変化なく全く受信不可

Kt90000
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■修理記録:OSCトリマ交換-----------------------------------

 ・フロントエンド内OSCトリマコンデンサー(TC4)を回しても変化なし
 ・これを撤去し、ユニット外側に新トリマー(10pF)を直付けしました
 ・直径3mm穴の開いた小さな圧着端子に新トリマを固定
 ・仮調整したところFM放送が受信できるようになりました
 ・ただTメーターの点灯具合がおかしい
 ・右側の三角が常時点灯したままFM同調点を示さない
 ・FM同調点を調整するL4を回しても反応しない

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■修理記録:L4(L30-0320-05)修理-----------------------------

 ・L4を回しても反応しない原因はたぶん内蔵コンデンサの容量抜けか?
 ・L4を取り外して裏側を見ると真っ黒に変色した状態でした
 ・内蔵コンデンサを除去して新コンデンサを外付けしました
 ・試行錯誤の結果、コンデンサの容量は82pFがちょうど良いです
 ・下記の調整作業を経て正常に受信できるようになりました

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■調整記録--------------------------------------------------

【FM OSC調整】
 ・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
 ・83MHz 受信 → 新TC4調整 → 電圧最大
【FM RF調整】
 ・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
 ・83MHz 受信 → TC1,TC2,TC3調整 → 電圧最大
 ・83MHz 受信 → T1調整 → 電圧最大
【クアドラチュア検波調整】
 ・83MHz 受信 → 電圧最大状態
 ・TR7020-3Pin-11Pin → 電圧計セット(Tメーター)
 ・83MHz 受信 → L4調整 → 電圧ゼロ(Tメーター中点)
【WIDE GAIN調整】
 ・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
 ・83MHz Narrow受信 → Sメーター電圧記録
 ・83MHz Wide受信 → VR1調整 → 上記電圧と同じ
【高調波歪調整】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz → T1(フロントエンド内)調整 → 高調波歪最小
【パルスカウント検波調整】
 ・TR4011-1Pin → 周波数カウンタセット
 ・83MHz受信 → L5調整 → 1.965MHz
【VCO調整】
 ・R56左足 → 周波数カウンタ接続
 ・SSG 83MHz 無変調 → VR5調整 → 76kHz
【セパレーション Narrow調整】※Narrow調整を先に行なうこと
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz Narrow → VR4調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【セパレーション Wide調整】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz Wide → VR3調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【REC CAL調整】
 ・83MHz受信 → 出力レベル記録
 ・83MHz受信 → VR2調整 → -6dB設定 ※430Hz
 ★VR2を回したところ基準音が聞こえるようになりました
【AM受信調整】
 ・AMループアンテナ → 接続端子注意 [AM]~[GND]
 ・600kHz → L11,L12調整 → Sメーター最大点灯
 ・1400kHz → TC1,TC2調整 → Sメーター最大点灯

Kt90060

■修理記録:L5(0252-05-081)修理-----------------------------

 ・受信調整が完了して「これで直った」と思ったら、あれ?
 ・ランニングテスト開始30分で突然受信音が消失
 ・「ザー」という局間ノイズしか聞こえなくなりました
 ・この時TメーターとSメーターは正常に反応します
 ・ということは問題はパルスカウント検波回路か?
 ・これまでの経験で怪しいのは以下のフィルターです
  ・L5(0252-05-081) 2nd OSC同調コイル
  ・L6(L79-0120-05) 2nd IF BPF
  ・L8(0109-05-081) PC検波後LPF
 ・手初めにL5の金属部分にハンダごてを当てて温度試験をしてみたら
 ・わずか数秒で同じ症状が発生しました
 ・ハンダごてを外しエアダスターでL5を数秒冷却するとFM受信が復活
 ・L5を取り外して裏側を確認すると予想通り内蔵コンデンサが真っ黒!
 ・これを除去して新品82pFで外付けで追加しました
  ・83MHz受信 → L5調整 → 1.965MHz
 ・再調整して受信動作が復活しました
 ・1週間のランニングテストでも不具合は再発しません
 ・どうやらL6とL8はまだ生きているようです

Kt90073Kt90074Kt90075Kt90076

■改造記録:フィラメント電球LED化---------------------------

 ・KT-900/KT-990のガラス製フロントパネルはとても素敵です
 ・分解してガラスの裏側まで磨くとその美しさが復活します
 ・分解清掃のついでに電球をLED化しました
【LED電源】
 ・オリジナル電球はAC仕様なのでDC電源を取れる場所を探す
 ・電源回路の未使用端子27番 → +21.7V ※これを借用します
 ・制限抵抗を配置するため背面パネルに小さな基板を増設
【指針照明】
 ・指針裏側の透明プラスチック内にφ4mm電球が仕込まれている
 ・ここは直径3mmのLED(warm white)に拡散キャップを被せて元に戻す
 ・実験用電源で明るさを確認しながら電流約4mA、制限抵抗2.2kΩで接続
 ・発光部に耐熱ポリイミドテープを貼って電球色っぽく仕上げました
【フロント照明】
 ・選局ツマミ内側に埋め込まれたφ4mm電球×2個直列配置
 ・ここにφ5mm電球色LED×2個を直列に仕込んで配線変更
 ・拡散キャップを被せオリジナル電球ホルダーに埋め込んで元に戻す
 ・実験用電源で明るさを確認しながら制限抵抗680Ωでよさそう
 ・実測電流は19mAでした

Kt90080Kt90084Kt90091Kt90095Kt90098

■試聴------------------------------------------------------

 ・KT-990/900のガラス製フロントパネルはとっても素敵です
 ・LED化するといろいろな色味を試したくなりますが
 ・私はできるだけオリジナルに近づけることを目指します
 ・たぶんLED化してあるとは気付かれない出来映えです

Kt900104

note:BLUESS Laboratory

2025年1月 5日 (日)

Technics ST-9030T 修理調整記録10

 ・2024年11月、30Tの故障機が届きました。
 ・ガンメタフェイスとオレンジ照明の組み合わせがステキな機種です
 ・以下、作業記録です

30t03

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 Technics ST-9030T ¥80,000(1977年頃)
 ・hifiengine Technics ST-9030 FM Stereo Tuner (1977-81)

30t02_2025010508510130t11

■動作確認--------------------------------------------------

【依頼者様からの事前情報】
 ・stereoランプが点灯しない、実際のステレオ感も無い
 ・IF band切換ランプも点灯しない
 ・周波数目盛りと指針に若干のズレ
【当方での確認事項】
 ・外観に目立つキズは無く保存状態は今まで見た中で最上クラス
 ・ただSメーターとTメーターがパネルの正常位置に収まっていません
 ・フロントパネルを分解した先人は組立て方法を間違えています
 ・さて、FMアンテナを接続して名古屋のFM局の受信テスト開始
 ・周波数目盛りと指針は約-0.2MHzの軽微なズレ
 ・Sメーターは大きく振れるがTメーターの動き方が少しおかしい
 ・名古屋地区のFM局はすべて受信OK
 ・ご指摘通りSTEREOインジケーター点灯しない、実際のステレオ感も無い
 ・IF band切換ボタンに連動するインジケーターも点灯しない
 ・3個のプッシュSWのうち、左側2個が押し込んだ位置でロックできない
 ・プッシュSW内部のロック機構が破損しているようです
 ・この影響でmuting offとhi-blend on機能が動作しない

■内部確認--------------------------------------------------

 ・前回修理時にフロントパネルを分解したようですが組立方法が不良でした
 ・フロントパネルが正常位置で固定されていなかったです
 ・二つのメーターがパネル窓に収まっておらず浮いた状態でした
 ・この状態でフロントパネルを強引に固定してありました
 ・メーター前面の透明プラスチックが割れなかったのは不幸中の幸いでしょう
 ・stereoランプの麦球がすでに交換済みでした
 ・試しにVCO調整用VR602を少し回したところ麦球は点灯しました
 ・しかし wideランプの麦球は点灯しません
 ・電球交換以外の修理痕は無かったです

30t2030t_00_20250105085001

■修理記録:プッシュSWがロックできない件--------------------

 ・Hi-blend切換、Muting切換の両SWが押し込んだ位置でロックできない
 ・スイッチ内部ののロック機構が壊れているかと思いましたが、
 ・フロントパネルを外してスイッチ本体を指で直接押したところ、
 ・何と! 押し込んだ位置でロックできました!壊れていません!
 ・原因はプッシュボタンの最深部がロック作動位置に届かない事でした
 ・ボタン裏側とスイッチ頭部の間に隙間があって最深部まで押し切れない
 ・対策としてボタン頭部に厚さ1mmのシリコンゴムを挟みました。
 ・本来はボタンとスイッチの隙間を埋める部品があったかもしれません?
 ・前回修理でフロントパネルを外した時にその部品が外れたかも?
 ・フロントパネルの分解経験は何度もありますが今まで気づかなかった、
 ・次に30Tを見る機会があれば確かめてみます

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■修理記録:wideランプとstereoランプをLED化-----------------

 ・STEREO用麦球は生きていましたが、この機に2個ともLED化しました
 ・色合いや明るさを合わせるためです
  →オリジナル麦球:φ4mm/6.3v/40mA
  →交換用LED:φ3mm/ウォームホワイト
【stereoランプ】
 ・33端子=アノード側、34端子=カソード側
 ・R618:330Ω/1w → 10kΩ/0.5w ※制限抵抗交換
 ・33端子~34端子間 → 1kΩ/0.5w ※追加(常時点灯防止のため)
【wideランプ】
 ・42端子=アノード側、32端子=カソード側
 ・R327:390Ω/1w → 10kΩ/0.5w 制限抵抗交換

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■調整記録--------------------------------------------------

【本体設定】
 ・MPX hi-blend=off
 ・Servo tuning=off
 ・IF selector=auto
 ・TP302とTP303を短絡すると強制narrowとなる
【レシオ検波調整1】
 ・入力信号なし
 ・TP201~GND DC電圧計セット → T201(narrow緑)調整 → 電圧ゼロ
 ・TP101~GND DC電圧計セット → T102(wide緑)調整 → 電圧ゼロ
【OSC調整】
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・SSG76MHz → L8調整 → Sメーター最大
 ・SSG90MHz → CT8調整 → Sメーター最大
【RF調整】
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・SSG76MHz → L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7調整 → Sメーター最大
 ・SSG90MHz → CT1,CT2,CT3,CT4,CT5,CT6,CT7調整 → Sメーター最大
 ・SSG83MHz → T1調整 → Sメーター最大
【レシオ検波調整2】
 ・入力信号なし
 ・TP101~GND DC電圧計セット → T102(wide緑)調整 → 電圧ゼロ
 ・TP201~GND DC電圧計セット → T201(narrow緑)調整 → 電圧ゼロ
【出力レベル調整】wide
 ・IF selector=wide
 ・音声出力端子にAC電圧計セット
 ・SSG83MHz 400Hz 100% → VR504調整 → 1.4v
【モノラル歪調整】
 ・音声出力をWaveSpectraで観測
 ・IF selector=wide
 ・SSG83MHz 1kHz 100% → T102(wide赤)調整 → 歪最小
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・SSG83MHz 1kHz 100%変調 → T201(wide赤)調整 → 歪最小
【出力レベル調整】narrow
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・音声出力端子にAC電圧計セット
 ・SSG83MHz 400Hz 100% → VR503調整 → 1.4v
【ミューティング調整】
 ・Servo tuning=auto
 ・TP102~GND DC電圧計セット
 ・SSG83MHz 1kHz → T202,T203調整 → 電圧最大
 ・SSG83MHz 1kHz 60dB → VR402調整 → 局間ノイズが消える位置へ
 ・SSG83MHz 1kHz 20dB → VR401調整 → ミューティング作動位置へ
【Sメーター調整】
 ・SSG83MHz 1kHz 100% → VR501調整 → Sメーター指針
【VCO調整】
 ・TP601 周波数カウンタ接続
 ・SSG83MHz無変調 → VR602調整 → 19kHz±30Hz
【左右レベル調整】
 ・SSG83MHz 1kHz ST変調 → VR702調整 → 左右chのレベルを同じ
【パイロットキャンセル調整】
 ・音声出力をWaveSpectraで観測
 ・SSG83MHz 1kHz ST変調 → VR601,L601,L602調整 → 19kHz最小
【サブキャリアキャンセル調整】
 ・SSG83MHz 1kHz ST変調 → CT701調整 → 38kHz最小
【セパレーション調整】
 ・音声出力をWaveSpectraで観測
 ・SSG83MHz 1kHz L/R信号 → VR701調整 → 漏れ信号最小
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・SSG83MHz 1kHz L/R信号 → VR703調整 → 漏れ信号最小
【ハイブレンド調整】
 ・音声出力端子にAC電圧計セット
 ・SSG83MHz 1kHz L/R信号 → VR502調整 → 左右レベルを確認
 ・MPX high-blend=on
 ・SSG83MHz 1kHz L/R信号 → VR502調整 → 左右レベル同一
【Auto IF セレクター調整】
 ・TP101 200kHz正弦波注入
 ・TP301 オシロスコープ接続 → T302調整 → 200kHz波形最大
 ・TP101 300kHz正弦波注入
 ・TP301 オシロスコープ接続 → T301調整 → 300kHz波形最大
 ・上記作業を数回繰り返す

30t40

■試聴------------------------------------------------------

 ・30T、見た目のかっこよさは別格ですね
 ・フロントパネルが傷だらけの中古品はよく見かけますが、
 ・傷の少ない個体は貴重品です

30t06

■謹賀新年2025----------------------------------------------

 ・定年退職したはずの職場で今もフルタイムで仕事しています
 ・趣味に没頭できる生活はまだ先のようです
 ・今年もマイペースで趣味と仕事をがんばっていきます

note:BLUESS Laboratory

2024年12月29日 (日)

TRIO KT-60

 ・2024年10月、研究材料としてTRIO KT-60をいただきました
 ・HOジャンクコーナーで何度か見かけたような気がします
 ・でも音声ケーブル直出し機だったので入手を見送ってきました
 ・今回初めて内部を見る機会をいただきました

Kt6003

■製品情報--------------------------------------------------

 ・1981年版のオーディオ雑誌に記事が載っていました
 ・TRIO KT-60 定価26,800円
 ・TRIO製アンプ KA-60 とセットになる製品のようです
 ・背面パネルがKT-900に似ているので1980年頃の製品かなと推定します
 ・ネット検索してもこれ以上の情報は分かりません

Kt60100
Kt6002Kt6011

■動作確認--------------------------------------------------

 ・ミニコンではなく標準サイズの薄型ボディ、持ち上げると重量感あり
 ・側面に擦り傷あるが、全体としては保存状態は良い
 ・背面パネルのアンテナ端子形状は KT-900 によく似ている
 ・さて、FMアンテナを接続して電源オン、F端子が無いのが残念
 ・透明プラ製の電源スイッチが電球色に点灯、ただ周波数窓照明は無い
 ・多少の周波数ズレあるが名古屋地区のFM局をすべて受信できました
 ・シグナルインジケーター点灯、STEREOランプ点灯、MUTING動作OK
 ・続いて適当なAMループアンテナを繋いでAM局の受信テスト
 ・AM局も受信OKでした
 ・FM/AMとも深刻な動作不良は無さそうです

Kt6005Kt6006Kt6008Kt6012Kt6013

■内部確認--------------------------------------------------

 ・ひろくんのサイトで兄弟機 KT-80 の詳細記事があります
 ・もしかして KT-60 もパルスカウント検波機か?と期待しましたが
 ・HA1137Wによるクアドラチュア検波、調整用VR1個だけの入門機でした
 ・FM3連AM2連バリコン搭載フロントエンド
 ・IF BAND切換機能なし
  ・IC1:AN217P  AM Tuner
  ・IC2:HA1137W FM IF System ※QD検波、MUTING、Sメーター
  ・IC3:HA12016 FM PLL MPX
  ・IC4:M51903L LED Driver
  ・VR1:VCO(76kHz)調整
 ・基板には部品未実装の穴が多数あります
 ・これらの穴に部品を満載した別機種があるかも?
 ・未調整のままでFM/AMとも受信できています
 ・これはシンプルな回路構成のおかげかもしれません

Kt6000
Kt6021Kt6022Kt6023Kt6012Kt6013

■調整記録--------------------------------------------------

【FM同調点調整】
 ・音声出力 → Wavespectra接続
 ・83.0MHz受信 → Sメーター最大位置を探す
 ・83.0MHz受信 → L2調整 → Wavespectraで信号レベル最大位置へ
 ・83.0MHz受信 → L3調整 → Wavespectraで高調波歪最小位置へ
【FM OSC調整】
 ・HA1137W-13pin(R28後足)→ 電圧計セット ※Sメーター電圧
 ・83.0MHz受信 → TC103調整 → 電圧最大位置へ
 ※L103調整不可のため83MHzのみで調整
【FM RF調整】
 ・HA1137W-13pin(R28後足)→ 電圧計セット ※Sメーター電圧
 ・83.0MHz受信 → TC101,TC102調整 → 電圧最大位置へ
 ※L101,L102 中空コイルの調整は難しいので83MHzのみで調整
【QD検波調整】
 ・音声出力 → Wavespectra接続
 ・83.0MHz受信 → L2調整 → 信号レベル最大位置へ ※再確認
 ・83.0MHz受信 → L3調整 → 高調波歪最小位置へ
【VCO調整】
 ・HA12016-16pin(R76左足)→ 周波数カウンタ接続
 ・83.0MHzST信号受信 → VR1調整 → 76.0kHz
【AM調整】
 ・ 600kHz受信 → L6,L10調整 → Sメーター最大
 ・1400kHz受信 → TC105,TC104調整 → Sメーター最大

Kt6030

■試聴------------------------------------------------------

 ・超シンプルな回路構成でセパレーション調整できません
 ・それでも実測のセパレーション値は左右とも45dB前後でした
 ・窓照明が無いので見映えはしませんがBGM目的なら十分使えます

Kt6009

note:BLUESS Laboratory

2024年12月22日 (日)

SANSUI TU-α707R 修理調整記録2

 ・2024年10月、3年ほど前に調整した707Rが不調で戻ってきました
 ・前回調整記録 2021年7月4日記事
 ・前回は再調整だけで復活しましたが、最近受信中に雑音が発生するとか
 ・さて故障原因は何か??

707r09_20241222090201

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 SANSUI TU-α707R ¥53,800(1991年頃)
 ・Hifi engine SANSUI TU-X711 Digital Synthesizer Tuner (1989-90)
【国内機】
 ※TU-α707   ¥59,800(1986年頃)
 ※TU-α707i   ¥59,800(1987年頃)
 ※TU-α707EXTRA ¥54,700(1989年頃)
 ※TU-α707R   ¥53,800(1991年頃)
【輸出機】
 ※TU-X701:TU-α707/707i
 ※TU-X711:TU-α707EXTRA/TU-α707R

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■動作確認--------------------------------------------------

 ・電源オン、周波数など表示部点灯。文字痩せは無さそう
 ・オート受信で名古屋地区のFM放送局を受信できました
 ・上り方向、下り方向ともに周波数ズレなし
 ・シグナルメーターフル点灯、STEREOランプ点灯。
 ・IF BAND切換OK、RF切換OK、MUTING動作OK、REC CALトーンOK
 ・あれ?特に問題ないけど、、
 ・と思っていたら、1時間ほど経ったころから雑音発生
 ・「ザザッ、ザザザザッ」という不定期なノイズが発生
 ・ノイズ発生と連動してSTEREOインジケーターが明滅する
 ・このときシグナルインジケーターの点灯具合に変化なし
 ・ノイズ発生時もオート選局は正常動作する
 ・AM受信時はノイズ発生しない
 ・問題はFM、PLL検波回路からMPX回路を中心に調べてみます

■内部確認--------------------------------------------------

 ・TU-α707i、TU-α707EXTRA、TU-α707、TU-α707R の中身は同じ
 ・ボディサイドの飾り部品、サンスイロゴが違うだけ
 ・SLDD - (Super Linear Digital Decorder)
 ・α707シリーズは【PLL検波 + LA3450】というシンセ機の完成形です
 ・当時定価5万円前後で買える機種では最高スペックだったと思います

Tu707extra_20241222090201

■修理記録:PLL検波回路 TC1(10pF) 交換----------------------

 ・まずは調整手順に従って各部再調整してみました
 ・その過程でPLL検波回路のTC1に触れると雑音が再現することを発見
 ・原因はトリマコンデンサTC1(10pF)の劣化です
 ・このタイプのトリマコンデンサの劣化故障事例は多数あります
 ・対策としてTC1を新品10pFに交換しました
 ・交換後はTC1に触れても回してもノイズは再発しません

A707r31A707r33

■調整記録--------------------------------------------------

 ・FM MODE → MONO
 ・IF BAND → WIDE
【基準周波数調整】
 ・IC1(LC7217)-1ピン~GND → 周波数カウンタ接続
 ・TC1調整 → 7.200000MHz±100Hz
【FM同調点調整】QD検波
 ・TP1~TP2 → 電圧計セット
 ・83MHz受信 → T4調整 → 0V±10mV
【FM VT電圧調整】
 ・JW3~GND → 電圧計セット
 ・90MHz(電波無し)→ 22.9V ※確認のみ
 ・76MHz(電波無し)→ 3.2V ※確認のみ
 ※OSCコイルは調整が難しいのでノータッチ
【FM RF調整】
 ・IC3-13ピン、またはVR5端子 → 電圧計セット(Sメーター電圧)
 ・83MHz受信 フロントエンド内RFコイル調整 → 電圧最大
 ※RFコイルの調整は難しいのでノータッチ
【WIDE/NARROW GAIN調整】
 ・IC3-13ピン、またはVR5端子 → 電圧計セット(Sメーター電圧)
 ・VR2,VR3 → 時計回り一杯に回す
 ・IF BAND → NARROW
 ・83MHz,30dB受信 → T2調整 → 電圧最大(電圧を記録)
 ・IF BAND → WIDE
 ・83MHz,30dB受信 → T1調整 → NARROW時と同じ電圧に
【PLL検波調整】
 ・TP3~TP4 → 電圧計セット
 ・電波入力なし → T5 調整 → 0V
 ・電波入力なし → TC1調整 → 0V ※微調整
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz,30dB受信 → T6調整 → 0V
 ・83MHz,70dB受信 → VR6調整 → 高調波歪最小
【Sメーター調整】
 ・83MHz,15dB受信 → VR5調整 → Sメーター最下段点灯位置へ
【REC LEVEL調整】
 ・83MHz,60dB受信 → VR9調整 → 信号レベル-6dBに設定
【PILOT CANCEL調整】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz,60dB,ST受信 → T8,VR10調整 → 19kHz成分最小
【WIDE セパレーション調整】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz,60dB,Lch受信 → VR7L調整 → Rch漏れ信号最小
 ・83MHz,60dB,Rch受信 → VR7R調整 → Lch漏れ信号最小
【NARROW セパレーション調整】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz,60dB,L/R受信 → VR8調整 → 反対ch漏れ信号最小
【AUTO STOPレベル調整】
 ・83MHz,30dB,ST受信 → VR1調整 → オート選局で停止する位置
【MUTING レベル調整】
 ・83MHz,20dB,ST受信 → VR4調整 → STEREO点灯、音声が出る位置
【AM VT電圧調整】
 ・R1~GND → 電圧計セット
 ・ 531kHz(電波無し)→ T1調整 → 1.5V±10mV
 ・1629kHz(電波無し)→ TC1調整 → 20V±10mV
【AM RF調整】
 ・ 603kHz受信 → T3 調整 → Sメーター最大
 ・1404kHz受信 → TC2調整 → Sメーター最大
【AM Sメーター調整】
 ・VR1
【AM AUTO STOP調整】
 ・VR2

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■試聴------------------------------------------------------

 ・修理後1週間のランニングテストでもノイズは再発しませんでした
 ・これでまた数年はFM放送を楽しめると思います
 ・TU-α707シリーズはどれもお勧めできる機種です

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note:BLUESS Laboratory

2024年12月15日 (日)

Victor FX-711 修理調整記録9

 ・2024年10月、FX-711の修理調整作業を承りました
 ・以下、作業記録です

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■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 VICTOR FX-711 ¥49,800(1987年頃)
 ・オーディオ懐古録 Victor FX-711 ¥49,800
 ・Hifi Engine JVC FX-1100 FM/AM Computer Controlled Tuner
 ・FX-711 取扱説明書 PDF形式

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■動作確認--------------------------------------------------

【提供者様からの事前情報】
 ・発売当時に新品購入したワンオーナー品
 ・長期間保管してあったものを最近使おうとしたら不具合あり
 ・-0.1MHzの周波数ズレ、受信感度低下、オート選局不可
【当方での確認事項】
 ・オート選局ではすべてのFM局を素通りして受信不可
 ・手動選局で確認すると-0.1MHの周波数で受信OK
 ・ズレた周波数でSTEREOランプ点灯、IF BAND切換OK、RF切換OK
 ・REC CALトーンもOK
 ・AMはオート選局で受信OKでした
 ・AMの周波数ズレなし
 ・オリジナルのAMループアンテナが同梱されていました
 ・初めて見ましたが、スリムな形状のループアンテナです

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■内部確認--------------------------------------------------

 ・ボディを開けた瞬間強いたばこ臭、基板全体が黄色く変色してる
 ・部品とホコリがヤニでコーティングされている状態
 ・部品面、配線面とも修理痕は見当たらない
 ・まずは所定の電圧チェック → 異常なし
   ・Q801-E(+30V)→ +29.3V
   ・Q803-E(+12V)→ +11.8V
   ・Q808-E(-12V)→ -12.1V
   ・Q805-E( +5V)→ + 5.2V
   ・J705-3pin(+5.6V)→ +5.7V ※電源基板
   ・J705-5pin(-35V) →-34.3.V ※電源基板

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■調整記録--------------------------------------------------

●FM部
【VT電圧】
 ・TP101 DC電圧計セット
 ・受信周波数 76MHz → L151調整 → 7.5V±0.1V
 ・受信周波数 90MHz → TC105調整 → 22.0V±0.1V
 ・上記作業を数回繰り返す
【RFトラッキング調整】
 ・VR602 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
 ・76MHz 40dB → L103,L104,L105,L106調整 → 電圧最大
 ・90MHz 40dB → TC101,TC102,TC103,TC104調整 → 電圧最大
 ★TC101~104調整で最大電圧が定まらない
【IFT調整】
 ・83MHz 1kHz 100%変調 40dB → T101調整 → 電圧最大
【PLL検波 VCO調整】
 ・TP104 周波数カウンタ接続
 ・受信バンド切替 → AM
 ・何も受信しない状態 → T208粗調整 → 10.7MHz±0.01MHz
 ・何も受信しない状態 → T208微調整 → 10.7MHz±0.01MHz
 ・受信バンド切替 → FMに戻す
【FM dB表示調整】
 ・83MHz 70dB → VR602調整 → 表示70dB
 ・83MHz 30dB → VR601調整 → 表示30dB
 ・上記作業を数回繰り返す
【モノラル歪調整:WIDE】
 ・IF BAND=WIDE
 ・音声出力をWaveSpectra接続
 ・83MHz 70dB → T204(黒)調整 → モノラル歪最小
【ステレオ歪調整:WIDE】
 ・IF BAND=WIDE
 ・音声出力をWaveSpectra接続
 ・83MHz 70dB → T202(黒)調整 → ステレオ歪最小
 ・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【ステレオ歪調整:NARROW】
 ・IF BAND=NARROW
 ・音声出力をWaveSpectra接続
 ・83MHz 70dB → T201(黒)調整 → ステレオ歪最小
 ・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【FM同調点調整】
 ・IF BAND=NARROW
 ・TP103 DC電圧計セット
 ・83MHz 70dB → T206調整 → 0V±1.5mV
【MUTINGレベル調整】
 ・MUTING=ON
 ・83MHz 20dB → VR604調整 → MUTING作動確認
【セパレーション調整】
 ・IF BAND=WIDE
 ・音声出力をWaveSpectra接続
 ・83MHz 70dB → VR401調整 → Lchもれ最小
 ・83MHz 70dB → VR402調整 → Rchもれ最小
 ・QSCインジケーターが点灯していないことを確認
【パイロット信号キャンセル調整】
 ・音声出力をWaveSpectra接続
 ・83MHz 70dB → VR403調整 → 19kHzもれ最小
 ・左右chのバランスに注意
【REC CAL調整】
 ・83MHz 70dB → 通常受信で出力レベル記録
 ・83MHz 70dB → VR404調整 → 上記記録-6dBに設定
 ・TONE 430Hz
●AM部
【VT電圧】
 ・TP102 DC電圧計セット
 ・受信周波数 522kHz → L302調整 → 1.8V±0.1V 実測1.8V
 ・受信周波数1629kHz → TC302調整 → 22.0V±0.1V 実測19.9V
 ・上記作業を数回繰り返す
【トラッキング調整】
 ・VR603 → 電圧計セット ※Sメーター電圧測定
 ・ 729kHz(NHK第一)受信 → L301調整 → 電圧最大
 ・1332kHz(東海ラジオ)受信 → TC301調整 → 電圧最大
 ・上記作業を数回繰り返す
【AM dB表示調整】
 ・999kHz 90dB送信 → VR603調整 → ※AMのdB値は適当です

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■修理記録:トリマコンデンサ交換----------------------------

 ・フロントエンドのトリマコンデンサTC101~104が劣化してるようです
  ・TC101~TC105 → 新品(10pF)5個交換
 ・VT電圧調整、RF調整をやり直したところ感度が大幅アップしました
 ・交換後にその他調整項目もすべてやり直しました
 ・同様にAM回路のトリマコンデンサ2個も予防交換しておきました
  ・TC301~TC302 → 新品(20pF)2個交換

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■試聴------------------------------------------------------

 ・本機のシグナルメーターはdB数値はなかなか正確な値を示します
 ・上下2点調整するので30dB~70dBの範囲内は数値をほぼ信用できます
 ・ちなみに、40dB程度でもSTEREOインジケーターは点灯しますが、
 ・良い音を望むなら60dB以上、できれば70dB以上の電波が欲しいところ
 ・そのためにアンテナの向きを変えたり増強したり、
 ・アンテナ環境の整備に努力が必要です

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