
平成19年5月の連休に実家の倉庫整理をして発掘しました。電源コードには「1985年」の印字があります。購入時の記憶がまったく無いので、多分私が購入したものではなく、知人が勝手に置いていった(捨てていった?)品だと思います。(ちなみにSONY ST-S333ESXⅡとONKYO T-445XXも一緒に見つけました。)
アンテナを接続し電源を入れたところFM/AMともに受信しますが、残念ながらFMステレオランプが点灯しません。出てくる音もモノラルです。本体に目立つ傷は無く、光沢あるサイドウッドもきれいです。表示管の輝度劣化ありません。周波数ズレありません。メモリー保持されます。RFモード切替、IF BAND切替、録音レベル設定用テストトーンが出せます。NOISE CANCELERというスイッチの使い方が良く分かりません。
カバーを開けてみると、薄い筐体にぎっしりと部品が詰め込まれています。電源部の背の高いコンデンサは側面に取り付けられています。さて、全体を眺めてIFシステムを担っているICを探します。
HA12412・・日立製のICがあります。これかな?と思って型番でネット検索するとすぐにデータシートのPDFファイルが見つかりました。ブロックダイヤグラムを見るとST-S333ESGのLA1235と同じような回路構成です。これはいけるかも!と思ってICの7pinと10pinに直流電圧計を繋ぎ79.5MHzのFM局を受信。すぐ左側にあるコアを回しながら、電圧がゼロになるように調整すると見事ステレオランプが点灯しました!音声も瑞々しいステレオです!
調子に乗ってFMフロントエンドの調整も試してみました。フロントエンド部は金属板でシールドされており、四隅のネジが堅くて外せなかったので部品番号が分かりません。調整箇所は「赤①」「青②」などと表記します。
本体正面から見てHA12412のすぐ手前に「FM SIGNAL」と書かれた半固定抵抗があります。手前側の足とGND(本体金属部)に直流電圧計をセット(実際には足に接続するスペースが無くて基板裏面から繋ぎました)。
ここから先は根拠の無いいい加減な作業です。79.5MHzのFM局を受信しながら「青①:局発用コイル?」を回して電圧が最大になる位置に設定。続いて77.8MHz、80.7MHz、82.5MHzのFM局を受信しながら「赤①」「赤②」「赤③」「赤④」を回し電圧が最大になる位置を探して、この作業を10回繰り返しました。「青②」は回しても電圧に変化無かったので元の位置に戻しました。感度が向上し「ジュルジュルジュル・・」という不快なノイズが皆無になりました。
組み直してNHK-FMを受信してみました。ちょうどオペラの放送でしたが、音は・・これが意外に良いです!私の聴感上は不具合を感じません。薄型筐体からは想定外の音が出てきました。やってみるものですね!
◆問題点は・・

・我が家で受信できるメインのFM局(77.8、79.5、80.7、81.3、82.5)を受信しての調整です。この5局にフォーカスした調整なので、FM76~90MHz全域に渡った調整になっていない点。88MHz辺りのFM局を受信すると逆に感度が低下しているかも?
・聴感上大きな影響力がある「ステレオセパレーションの調整」ができていない事。やはり標準信号発生器が欲しい・・
◆教訓は・・
・当然のことですが、本格的な作業には本格的な測定機器がどうしても必要。
・サポートが充実しているメーカー(KENWOODやPIONEERなど)の機種は、素人が弄る前にさっさとサービスセンターに調整を依頼すべき。私の経験上、調整だけなら高くても8,000円程度です。
■■追記 2007年12月7日 ■■■ 再調整の記録 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■

このインチキ調整記事を書いてから半年・・ついに中古測定器(LEADER 3215 / National VP-7633A)を使ってTU-S707Xを再調整できる日が来ました。ひろくん様にご教授いただいたようにFM同調点やフロントエンドの調整をやり直し、19kHzパイロット信号のキャンセルやステレオセパレーションもきっちり調整しました。本機のセパレーション調整はWIDE/NARROWそれぞれに可能です。WaveSpectraで1kHzの波形を見ながらWIDE側で70dB位まで改善できました。
一通りの作業が終了していつものFM番組を聴いてみました。結果は・・とっても良い印象です。中音域(例えばアナウンサーの声など)に厚みが感じられます。アナウンサーの息遣いがリアルな感じです。捨てずに持っていて良かった・・半年振りに宿題を解決できてホッとしました・・(笑)
■■追記 2008年5月17日 ■■■ 再々調整の記録 ■■■■■■■■■■■■■■■■■
約一年前に書いた調整記事は今読み直すと随分恥かしい内容です。[SLDD]について学習した機会に再度調整をやり直してみました。上記記事は記録として残しますが、実際の作業はこれ以降を参考にしてください。フロントエンドの調整箇所は写真に示すように再定義しました。ただし、ここでご紹介する調整方法が正しいかどうかは定かではありません。挑戦する方は自己責任でお願いします。※2008年10月23日一部修正加筆
※RF-IF部基板の調整(本体正面から見て右側の基板)----------------------------------
【本体正面・機能切替ボタン設定】
・FM MODE=MONO
・IF BAND=WIDE
・RF MODE=DX
【基準周波数調整】
・IC1[TC9147BP] 36-42pin短絡
・IC1[TC9147BP] 24pin-GNDに周波数カウンタセット
・TC1を調整 → 25kHz
【VT電圧確認】
・フロントエンド内[VT-GND]に直流電圧計接続
・76MHz時の電圧=実測値3.4V(確認のみ)
・90MHz時の電圧=実測値21.4V(確認のみ)
※電圧指定値不明ですが、電源部から24V供給されているのでOKとします。
【フロントエンド調整】
・IC3[HA12412] 13pin-GNDに直流電圧計接続
・SSG 76MHz、1kHz、100%変調、30dB
・受信周波数76MHzの位置でコイルL1,L2,L3,L4の間隔調整 → 電圧最大値へ。
・SSG 90MHz、1kHz、100%変調、30dB
・受信周波数90MHzの位置でトリマコンデンサTC1,TC2,TC3,TC4調整 → 電圧最大値へ。
・上記作業を数回繰り返す
【IFTコイル調整】
・IC3[HA12412] 13pin-GNDに直流電圧計接続
・SSG 83MHz、1kHz、100%変調、30dB
・受信周波数83MHzの位置でフロントエンド内IFTコイル調整 → 電圧最大値へ。
・RF基板上の[T1]を調整 → 最大電圧へ。
・IF BAND=NARROWに切り替え → 電圧値測定。
・IF BAND=WIDEに戻して電圧測定 → VR2[WIDE GAIN]調整 → NARROW時と同じ電圧に。
【FM同調点の調整】
・[TP1-TP2] 直流電圧計接続
・無信号状態
・T2のIC側コアを調整 → 電圧=0V±30mVに。
・SSG 83MHz、1kHz、100%変調、60dB
・T2のIC反対側コアを調整 → 二次高調波最小に。 ※二次高調波は音声出力をWaveSpectraで観察
・上記作業を数回繰り返す
【FM LOCKED LEVEL調整】
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、30dB
・VR4[FM SIGNAL]を調整 → 本体正面[LOCKED]オレンジ色LEDが全灯する位置に。
※MPX部基板の調整(本体正面から見て左側の基板)---------------------------------------
【本体正面・機能切替ボタン設定】
・FM MODE=STEREO
【PLL VCO フリーラン周波数調整】
・SSG 83MHz、無変調、60dB
・TP1-TP4に直流電圧計接続 → VR105[OFFSET VCO]調整 → 電圧=0V±0.05V
・TP3[VCO]-GNDに周波数カウンター接続 → L101調整 → 304.000kHz
【PILOT OFFSET調整】
・SSG 83MHz、無変調、60dB
・TP2-TP5に直流電圧計接続 → VR104[PCAN]調整 → 電圧=0V±0.1V
・SSG 83MHz、60dB、19kHzPILOT信号ON → ステレオランプ点灯を確認
【PILOT CANCEL調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、60dB、19kHzPILOT信号ON
・本体正面のステレオランプ点灯を確認。
・L100、VR103L調整 → WaveSpectraでL-ch波形観察 → 19kHz信号レベル最小に。
・VR106、VR103R調整 → WaveSpectraでR-ch波形観察 → 19kHz信号レベル最小に。
※WaveSpectraはリニアスケールで見ると分かりやすい。
【IF BAND=WIDE セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Rchのみ信号、PILOT信号ON
・WaveSpectraでL-chを観察しながらVR102Lを調整 → 信号漏れを最小に
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Lchのみ信号、PILOT信号ON
・WaveSpectraでR-chを観察しながらVR102Rを調整 → 信号漏れを最小に
・VR100[BEAT NOISE]調整 → ビートノイズを最小に。
【IF BAND=NARROW セパレーション調整】
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Rchのみ信号、PILOT信号ON
・WaveSpectraでL-chを観察しながらVR101Lを調整 → 信号漏れを最小に
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、70dB、Lchのみ信号、PILOT信号ON
・WaveSpectraでR-chを観察しながらVR101Rを調整 → 信号漏れを最小に
・VR100[BEAT NOISE]調整 → ビートノイズを最小に。
【MUTING LEVEL調整】右側RF基板
・音声出力をWaveSpectraに接続
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、25dB、ステレオ信号、PILOT信号ON
・VR3[MUTE]を調整 → ステレオランプ点灯し信号が出る位置へ
【AUTO STOP LEVEL調整】右側RF基板
・SSG 83MHz、1kHz 100%変調、30~35dB、ステレオ信号、PILOT信号ON
・VR1[FM.STOP]を調整 → オートサーチが有効な位置へ
AM部省略・・
※参考資料-------------------------------------------------------
TICで[TU-S77X/S77XW]と記載された回路図を入手しました。一部実装されていない部品もありますが、この回路図と[TU-S707X]はほとんど一致します。この回路図で示されたMPX部がディスクリート回路による[SLDD]だと思われます。オリジナルの回路図に一部加筆したものをアップします。
・「TU-S77X-1.pdf」RF/IF部の回路図
・「TU-S77X-2.pdf」MPX部の回路図
[TU-S707X]ではHA12412-6pinのクォドラチャー検波出力がそのままMPX部に入っています。特別な歪補正回路は無いので二次高調波が目立ちますが、それでも主信号の反対CHへの漏れは観測できないほど抑えられます。とても優秀な回路だと思います。

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