Technics ST-8600
ST-8600は1975年当時の定価72,800円「中の上クラス」のFM/AMチューナーです。2008年8月、ヤフオクで終了間際&入札なしのST-8600を偶然見かけ心が揺れてしまいました。私は巨大サイズのバリコン式チューナーが妙に好きです。置き場所に困ることは分かっているのに・・つい手を出してしまいました。
当然NC/NRのジャンク品です。でも修理調整の実験用にはちょうど良い素材になります。送料を含めて実質1,700円で入手しました。実は同シリーズの弟機ST-8200を持っています。この弟機から使えるパーツを移植して上位機のST-8600を復活させようと考えたわけです。
■動作チェック------------------------------------------------------------------
・予想外に「取扱説明書」が付属。これはラッキーでした。
・正面パネル、ボディもほぼ無傷。
・ヤニ汚れなし。
・ボディを開けた形跡なし。
・FM/AMとも受信OK。
・周波数目盛から-0.5MHzほどズレた位置で受信する。
・メーター動作は二つともOK。
・チューニングメーター照明切れ。
・シグナルメーター最大振れ位置でチューニングメーターがセンターにならない。
・STEREOランプが点灯しない。音声もステレオにならない。
比較的状態の良いジャンク品でした。TICでST-8600回路図や調整マニュアルが入手できた事、弟機ST-8200のサービスマニュアル(日本語版)も手元にある事、・・何とかなりそうな予感です。
■製品情報---------------------------------------------------------------------
・オーディオ回顧録
→http://www.niji.or.jp/home/k-nisi/st-8600.html
・オーディオの足跡
→http://www.audio-heritage.jp/TECHNICS/tuner/st-8600.html
・Tuner Information Center(TIC)
→http://www.fmtunerinfo.com/technics.html ※ヨーロッパ向け輸出機はST-9600
※<回路図・調整マニュアル>はFMTuners Group Archive III に移されていました。
■取扱説明書「特長」より抜粋([ICの型番]加筆)------------------------------------------
新開発の周波数直線型5連バリコン採用の信頼性の高いFMフロントエンド部
FMアンテナ入力端子は、指向性の鋭いFM専用アンテナと妨害雑音に強い75Ω同軸ケーブルを使用し、本機の受信性能を最高に引きだしていただくため、300Ω端子を廃止し75Ω端子のみとしております。
バリコンは、電気的精度はもとより、温度変化や経年変化にも強い信頼性の高い新開発の周波数直線型5連バリコンを採用し、4極MOS型FET[3SK40]使用のRF増幅段をはさんで複同調回路を2段設けるなど、高い混信妨害排除能力を得ています。
局部発振回路は、高周波低雑音トランジスタ、アルミコア入り発振回路の採用とテクニクス 独自の設計手法を採用するなど、周波数ずれの極めて少ない高品位の局部発振を得ています。さらにそれをバッファ回路を通して4極MOS型FET[3SK40]2石によるバランスドミキサーに供給しています。これらの結果、優れた妨害排除能力、優れた諸特性をもつ、信頼性の高いFMフロントエンド部を構成しています。
群遅延特性と選択度特性を重視した信号系IF回路と独立した制御系IF回路
独立した信号系IF回路により優れた群遅延特性と高い選択度特性を得ています。選択素子には、従来よりさらに厳しい基準で開発した2素子構成の群遅延平坦型セラミックフィルタを4個使用するとともに、優れた振幅特性を得るため、シングルインラインIC3個[uPC555,uPC555,uPC577]の使用を含め差動増幅6段の信号系IF回路を構成し、選択度85dB、S/N比80dB以上等モノラル、ステレオ時とも諸特性を大幅に向上させています。
制御系IF回路では、AGCのかかった5段構成の増幅部と狭帯域セラミックフィルタを2個有しており、入力によって直線に変化する電界強度計用とし、理想的な特性を得ております。さらに独立したLC復同調回路による帯域制限回路とのアンド回路によりミューティング回路を形成し、2段の入カレベル制御を行なっています。
PLL方式採用のMPXステレオ復調回路
MPX部の38kHzスイッチング信号は、PLL方式による純電子式位相保持方式で抜群の環境特性、経年変化特性を有していますから、長期にわたり安定したスイッチング信号を供給し続けます。
スイッチング回路は、二重差動方式を一つの高密度集積IC[SN76115N=ULN2110A]で構成し、前段の優れた高周波特性と相まって、ステレオ歪、非直線クロストーク、セパレーション特性が低~高周波領域にわたって大幅に向上されています。
さらにテクニクス独自の19kHzパイロット信号キャンセル回路を採用することにより19kHz成分のリークキャリアを-65dBに抑えながら周波数特性を18kHzで(+0.2dB,-0.8dB)相遅延特性平担を得、より忠実な波形伝送特性を得ています。
さらに位相比較入力として、コンポジット信号より19kHzパイロット信号のみを取りだすジッタ防止回路を採用することによって、より安定なステレオ復調を行なっています。
FMエアチェックの理想を追求したFMローノイズ録音シスデム
本機では、より優れたFMエアチェックを行なうため、FM放送局の送り出しのときに用いられる、プリエンファシスを巧みに利用したFMローノイズ録音システムを内蔵しています。
このシステムは、テープ録音をする場合、放送局のプリエンファシスがかかった状態で録音をし、再生時にディエンファシスをかけることにより、テープ録音の宿命であるテープヒスノイズを軽減し、低雑音の録音・再生を可能にしたシステムです。
さらには、ピンクノイズ出力をもち、録音時のレベル設定の目安に、またスピーカの音質検討に、あるいはスピーカの位相合わせに等、数多くの利用価値をもった機能を有しています。
高安定受信状態を実現する電子微同調機能を有するサーボ・チューニング・システム
独自のサーボ・チューニング・システムにより、いかなる条件下でも、優れた性能を最良の状態で発揮します。たとえば、選局時の同調ズレ、周波数ズレや放送局の周波数ドリフトまでも±10kHz以内にロックインする機能を有しており、絶対精度を追求するシンセサイザー方式よりも柔軟性をもち、より優れた働きをおこない、極めて安定度の高い受信状態を確保することができます。
周波数直線型バリコン使用のAM部
ミキサー回路、局部発振回路、IF2段増幅回路のオーソドックスな回路とLCフィルタの採用により、定評のある受信と音質を確保しています。また、同調も容易に行なえるよう周波数直線型バリコンを採用しています。
定電圧電源使用の完全コンプリメンタリSEPP低周波増幅回路
前段で得られた高品位の音質を忠実に増幅するため、低周波増幅回路は、完全コンプリメンタリSEPP回路構成のIC[uPC1016C]を採用し、電源は安定化された正負2電源を使用しております。この結果、高S/N、低歪率、広帯域を確保しています。
■修理調整記録-----------------------------------------
調整箇所を示したイラスト入り調整マニュアルがあるので作業は比較的簡単です。留意事項のみ以下に書き留めます。
・チューニングメーター照明用電球をST-8200から移植
・[FM-IF ALIGNMENT]調整は以下の方法で代用。
・T101緑色コアを回してチューニングメーターを中央に
・T101茶色コアを回して2次高調波を最小に
・上記作業を数回繰り返す。
・[FM-RF ALIGNMENT]
・シグナルメーター調整用VR561に直流電圧計をセットして最大値になるよう調整
・メーターの振れを見ながら調整するよりも正確
・[FM MPX PILOT ALIGNMENT]
・周波数カウンタはTP601に代えてIC601-10pinに直接セット
・VR601を回して19kHz±30Hzに調整
■試聴-----------------------------------------
VR601の調整でステレオランプ点灯しステレオ受信できました。とりあえず不具合は解消されましたが、さすがに「高音質・・」という訳にはいきません。AM放送のような「こもった」ような音になります。高音域の再生レベルが落ちている感じです。本格的に復活させるにはコンデンサーなどの劣化部品の交換が必要ですね。作業は老後の楽しみにとっておきます。一方のST-8200は基板、ランプ、つまみ類を確保して解体処分しました。
私は留守録用チューナーにはシンセ式、のんびりとリアルタイムでFMを聴くときは照明が美しいアナログ式を使い分けています。古いチューナーに高音質を期待しているわけではありません。何度も書いていますが、少し照明を落とした薄暗い仕事部屋で、お酒をチビチビ飲みつつ、新しい仕事の構想を練りながら、まったりとベストオブクラシックなどのFM放送を聴く、そんな時間を大切にしています。この雰囲気にはダイヤルスケールが美しくライトアップされたアナログチューナーがベストマッチです。
■仕様一覧表-------------------------------------
| Technics ST-8600 定格 | |
|---|---|
| 発売年 | 1975年 |
| 定価 | 72,800円 |
| バリコン | FM5連、AM3連 |
| FM検波方式 | レシオ検波 |
| <FMチューナー部> | |
| 受信周波数 | 76~90MHz |
| 実用感度(IHF) | 0.9μV(75Ω) |
| 歪率(100%変調時) MONO | 0.15% |
| 歪率(100%変調時) STEREO | 0.25% |
| S/N(IHF) | 80dB |
| 周波数特性 | 20Hz~18kHz +0.2dB,-0.8dB |
| 実効選択度(IHF) | 85dB |
| キャプチュアレシオ(IHF) | 1.0dB |
| イメージ妨害比(83MHz) | 105dB |
| IF妨害比(83MHz) | 105dB |
| スプリアス妨害比(83MHz) | 100dB |
| AM抑圧比 | 55dB |
| ステレオセパレーション(1kHz) | 45dB |
| ステレオセパレーション(10kHz) | 35dB |
| リークキャリア | -65dB(19kHz) |
| アンテナ端子 | 75Ω不平衡型 |
| <AMチューナー部> | |
| 受信周波数 | 525~1605kHz |
| 感度(S/N=20dB) | 30μV |
| 選択度 | 25dB |
| イメージ妨害比(1000kHz) | 80dB |
| IF妨害比(1000kHz) | 85dB |
| <総合> | |
| 出力 OUTPUT | 0.077~1.55V |
| 出力 RECPUT | 0.6V |
| 消費電力 | 22W |
| 電源 | AC100V,50-60Hz |
| 寸法(幅×高さ×奥行) | 450×173×385mm |
| 重量 | 8.6kg |
| <付属品> | |
| フィーダーアンテナ | 1本 |
| F型プラグ(3C-2V用) | 1個 |
| F型プラグ(5C-2V用) | 1個 |
| 接続コード | 1本 |
| リング | 2個 |
| <<参考情報>> | |
| 参考サイト1 | オーディオ回顧録 |
| 参考サイト2 | オーディオの足跡 |
| 参考サイト3 | TIC |
| カタログ | 捜索中 |
| ST-8600 取扱説明書 | PDF形式(3.3MB) |
| ST-8600 回路図 | PDF形式(2.3MB) |
| ST-8600 サービスマニュアル | PDF形式(1.0MB) |
| ST-8200 サービスマニュアル | PDF形式(3.7MB) |
| ST-8200 調整記録 | 2007年10月4日記事 |
※9月2日のココログ仕様変更に伴い、1MBを超える写真やファイルがアップできなくなりました。今後1MBを超えるデータはホームページ領域に置いてリンクを張ることにします。・・使いにくくなりました・・また引っ越しかな~?
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