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2024年8月の記事

2024年8月25日 (日)

Technics ST-9030T 修理調整記録9

 ・2024年5月、30Tの故障機が届きました。
 ・ガンメタフェイスとオレンジ照明の組み合わせが惚れ惚れする機種です
 ・以下、作業記録です

30t04

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 Technics ST-9030T ¥80,000(1977年頃)
 ・hifiengine Technics ST-9030 FM Stereo Tuner (1977-81)

30t0230t12

■動作確認--------------------------------------------------

【依頼者様からの事前情報】
 ・0.2Mhz程度ズレているが同調はしている
 ・servo tuningが効かずスイッチONで同調しようとすると音が途切れる
 ・やむなく通常OFFにしている
 ・Tメーターはセンターより左側で同調する
 ・75Ωアンテナ端子を触るとSメーターが大きく動く
 ・通常NHK-FM(名古屋)をSメーター目盛り3.5で受信している

【当方での確認事項】
 ・外観に目立つキズは無く保存状態は良好
 ・名古屋地区のFM局で受信テスト開始
 ・ご指摘のように-0.2MHz程度ズレた位置で受信OK
 ・servo tuning ONでも受信できました
 ・ただSメーター最大点とTメーター中点が一致しない
 ・音が途切れるのはたぶんMUTINGの調整ズレでしょうか
 ・当方では5Cケーブルをネジ式F端子でアンテナ端子に固定します
 ・この状態ではアンテナ端子に触ってもSメーターに変化ありません
 ・NHK-FM名古屋82.5MHzを受信するとSメーターの目盛りは4.2位でした
 ・信号発生器で目盛り3.5を再現すると電波強度は約40dBのようです

■内部確認--------------------------------------------------

 ・部品交換歴や修理歴は無さそうです
 ・アンテナ端子を確かめたのですが基板側にハンダ割れは無かったです
 ・ただ、差込むだけのFプラグを使うと確かにグラグラですね
 ・この状態だと触れるだけでSメーターの振れ具合が変動します
 ・太い5C同軸ケーブル+ネジ式端子の利用をお勧めします

30t_00

■調整記録--------------------------------------------------

【本体設定】
 ・MPX hi-blend=off
 ・Servo tuning=off
 ・IF selector=auto
 ・TP302とTP303を短絡すると強制narrowとなる
【レシオ検波調整1】
 ・入力信号なし
 ・TP201~GND DC電圧計セット → T201(narrow緑)調整 → 電圧ゼロ
 ・TP101~GND DC電圧計セット → T102(wide緑)調整 → 電圧ゼロ
【OSC調整】
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・SSG76MHz → L8調整 → Sメーター最大
 ・SSG90MHz → CT8調整 → Sメーター最大
【RF調整】
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・SSG76MHz → L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7調整 → Sメーター最大
 ・SSG90MHz → CT1,CT2,CT3,CT4,CT5,CT6,CT7調整 → Sメーター最大
 ・SSG83MHz → T1調整 → Sメーター最大
【レシオ検波調整2】
 ・入力信号なし
 ・TP101~GND DC電圧計セット → T102(wide緑)調整 → 電圧ゼロ
 ・TP201~GND DC電圧計セット → T201(narrow緑)調整 → 電圧ゼロ
【出力レベル調整】wide
 ・IF selector=wide
 ・音声出力端子にAC電圧計セット
 ・SSG83MHz 400Hz 100% → VR504調整 → 1.4v
【モノラル歪調整】
 ・音声出力をWaveSpectraで観測
 ・IF selector=wide
 ・SSG83MHz 1kHz 100% → T102(wide赤)調整 → 歪最小
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・SSG83MHz 1kHz 100%変調 → T201(wide赤)調整 → 歪最小
【出力レベル調整】narrow
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・音声出力端子にAC電圧計セット
 ・SSG83MHz 400Hz 100% → VR503調整 → 1.4v
【ミューティング調整】
 ・Servo tuning=auto
 ・TP102~GND DC電圧計セット
 ・SSG83MHz 1kHz → T202,T203調整 → 電圧最大
 ・SSG83MHz 1kHz 60dB → VR402調整 → 局間ノイズが消える位置へ
 ・SSG83MHz 1kHz 20dB → VR401調整 → ミューティング作動位置へ
【Sメーター調整】
 ・SSG83MHz 1kHz 100% → VR501調整 → Sメーター指針
【VCO調整】
 ・TP601 周波数カウンタ接続
 ・SSG83MHz無変調 → VR602調整 → 19kHz±30Hz
【左右レベル調整】
 ・SSG83MHz 1kHz ST変調 → VR702調整 → 左右chのレベルを同じ
【パイロットキャンセル調整】
 ・音声出力をWaveSpectraで観測
 ・SSG83MHz 1kHz ST変調 → VR601,L601,L602調整 → 19kHz最小
【サブキャリアキャンセル調整】
 ・SSG83MHz 1kHz ST変調 → CT701調整 → 38kHz最小
【セパレーション調整】
 ・音声出力をWaveSpectraで観測
 ・SSG83MHz 1kHz L/R信号 → VR701調整 → 漏れ信号最小
 ・TP302~TP303短絡(強制narrowモード)
 ・SSG83MHz 1kHz L/R信号 → VR703調整 → 漏れ信号最小
【ハイブレンド調整】
 ・音声出力端子にAC電圧計セット
 ・SSG83MHz 1kHz L/R信号 → VR502調整 → 左右レベルを確認
 ・MPX high-blend=on
 ・SSG83MHz 1kHz L/R信号 → VR502調整 → 左右レベル同一
【Auto IF セレクター調整】
 ・TP101 200kHz正弦波注入
 ・TP301 オシロスコープ接続 → T302調整 → 200kHz波形最大
 ・TP101 300kHz正弦波注入
 ・TP301 オシロスコープ接続 → T301調整 → 300kHz波形最大
 ・上記作業を数回繰り返す

30t30

■試聴------------------------------------------------------

 ・上記調整作業によって当初の不具合は解消しました
 ・受信感度(Sメーターの振れ具合)も少し向上したと思います

30t08

 →note:BLUESS Laboratory

2024年8月18日 (日)

PIONEER F-700 修理調整記録5

 ・2024年5月、市内のリサイクルショップで何と F-700 を見かけました
 ・ジャンク価格の値札に「Sメーターが動かない」と手書きメモが、
 ・メーター自体が壊れていたらどうしようもないなあ、と思いつつ
 ・でも何と言ってもF-700だし、パイオニア製パルスカウント検波機だし
 ・修理出来なくても最悪は部品取り機で活用できるし、、
 ・いつものように楽観的に考えて研究材料として確保してきました

F70003_20240818083901

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 Pioneer F-700 ¥65,000(1979年発売)
 ・Hifi Engine PIONEER F-700 (1981)
 ・F-700/F-500カタログ 1980年4月版
 ・F-700 取扱説明書

F70002_20240818083601F70018

■動作確認--------------------------------------------------

 ・弟機にF-500がありますが、F-700はFM専用機なので個人的に好みです
 ・ボディに多少の擦り傷あるもののフロントパネルはきれいな状態
 ・プッシュボタンに緑青サビがなくて光沢を感じるのは珍しい
 ・さて電源オン、周波数窓の照明点灯、二つのメーター照明点灯
 ・照明電球はすべて点灯、さて肝心の受信テスト開始
 ・名古屋地区のFM局受信を試みる、、、が全く受信しない
 ・Sメーターは全く振れない、これは値札の説明書きは正確でしたが、
 ・しかし指針に組み込まれたTメーターインジケーターも点灯しない
 ・Sメーターが動かない理由はそもそも受信動作していないことかも?
 ・試しに信号発生器から83MHz-120dBの強力電波を注入したところ
 ・何と、Sメーターが大きく振れてSTEREOランプ点灯
 ・指針内のTメーターインジケーターも左右とも点灯OK
 ・自宅では電波強度75dB程度あるはずですが受信不可とは、
 ・どうやら受信感度が大幅に低下していることが不調原因のようです

■内部確認--------------------------------------------------

 ・ボディ後方開口部付近に堆積した大量の埃をエアとブラシで清掃
 ・FMアンテナ端子から強力電波(120dB)を注入すると正常動作する
 ・ということはRF回路またはIF回路で信号の増幅が出来ていない
 ・試しにIF回路初段のR27に10.7MHzを直接注入したところ正常に動作
 ・つまりフロントエンド内で信号増幅できていないということ

F700_20240818083901

■修理記録:ヒューズ抵抗交換--------------------------------

 ・経験上、本機の弱点はヒューズ抵抗にあることが分かっています
 ・回路図を見ると保安指定部品 22Ω(1/4W)
 ・どのヒューズ抵抗も両端部が明らかに変色しています
 ・取り外して抵抗値を確認すると以下の通り
  ・R6 (22Ω) → 843Ω
  ・R7 (22Ω) → 160Ω
  ・R15(22Ω) → 273Ω
  ・R17(22Ω) → 983Ω
  ・R24(22Ω) → 120Ω
  ・R25(22Ω) → 121Ω
  ・R152(22Ω) → 98Ω
  ・R160(22Ω) → 433Ω
  ・R163(22Ω) → 320Ω
 ・ヒューズ抵抗を → 抵抗(1/2w品、サイズは1/4w品)に交換しました
 ・全数を新品交換したところ、期待通り受信動作が復活しました
 ・以下の調整作業を経て安定動作するようになりました

F70029_20240818083701F70028_20240818083701

■調整記録--------------------------------------------------

【同調点調整】
 ・TP3~TP4 → 電圧計セット
 ・無信号 → T5調整 → ±0v
【FM OSC調整】
 ・IF BAND=NARROW
 ・目盛り位置76MHzに指針セット
 ・76MHz 70dB 受信 → L6調整 → Sメーター最大
 ・目盛り位置90MHzに指針セット
 ・90MHz 70dB 受信 → TC6調整 → Sメーター最大
【RF調整】
 ・IF BAND=NARROW
 ・目盛り位置76MHzに指針セット
 ・76MHz 40dB 受信 → L1,L2,L3,L4,L5調整 → Sメーター最大
 ・目盛り位置90MHzに指針セット
 ・90MHz 40dB 受信 → TC1,TC2,TC3,TC4,TC5調整 → Sメーター最大
 ・83MHz 40dB 受信 → L7調整 → Sメーター最大
 ・83MHz 40dB 受信 → VR1調整 → Sメーター最大
 ・VR2近くの2個のFET(Q4,Q5)S端子 → 電圧計セット
 ・83MHz 40dB 受信 → VR2調整 → 0v
 ※VR1:相互変調調整
 ※VR2:キャリアバランス調整
【IF調整】
 ・IF BAND=NARROW
 ・目盛り位置83MHz付近でSメーター最大位置に指針セット
 ・83MHz 40dB 受信 → T1,T4調整 → Sメーター最大
 ・Sメーターの目盛りを記録
 ・IF BAND=WIDE
 ・VR3調整 → Sメーターの目盛りをNARROW時と同じ位置に
【FM同調点調整】※クアドラチュア検波
 ・IF BAND=WIDE
 ・83MHz 70dB 受信 → T4調整 → Tメーター中点 ※確認のみ
【ミューティング調整】
 ・VR4調整
【Sメーター振れ調整】
 ・VR5調整
【パルスカウント検波調整】
 ・TP8~TP7(GND) → 周波数カウンタ接続
 ・83MHz 70dB 受信 → T7調整 → 1.26MHz
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz 70dB 受信 → TC7調整 → 歪率最小
【変調度メーター調整】
 ・IF BAND=WIDE
 ・83MHz 70dB 受信 → VR6調整 → Deviationメーター100%
【REC LEVEL調整】
 ・83MHz 70dB 受信 → 信号レベル記録
 ・REC LEVEL オン → VR12調整 -6dB設定 ※実測281Hz
【VCO整】
 ・IF BAND=WIDE
 ・TP9 → 周波数カウンタ接続
 ・無信号 → VR7調整 → 76Hz
【STEREO歪率調整】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・IF BAND=WIDE
 ・83MHz 70dB 1kHz ST受信 → T1調整 → 歪率最小
 ・83MHz 70dB 400Hz ST受信 → L29調整 → 歪率最小
 ・IF BAND=NARROW
 ・83MHz 70dB 400Hz ST受信 → T4調整 → 歪率最小
【パイロット信号キャンセル調整】
 ・IF BAND=WIDE
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz ST信号 60dB 受信 → VR8調整 → 19kHz最小
 ・左右バランスに注意
【セパレーション調整】
 ・IF BAND=WIDE
 ・83MHz ST 80dB 受信 → VR9調整 → Lch漏れ最小
 ・83MHz ST 80dB 受信 → VR10調整 → Rch漏れ最小
【セパレーション調整】
 ・IF BAND=NARROW
 ・83MHz ST 80dB 受信 → VR11調整 → L/Rch漏れ最小

F70027_20240818083901

■試聴------------------------------------------------------

 ・Sメーター自体の故障じゃなくて良かったです
 ・この時代のヒューズ抵抗は全数要チェックですね
 ・貴重なパイオニア製パルスカウント検波機が復活しました 

■改造記録:照明電球LED化-----------------------------------

F700led303

 ・さて、今回は修理依頼品ではないので気楽に実験に取り組めます
 ・LED色はシンプルなホワイト色に仕上げてみました
 
 ・オリジナル周波数窓照明:T10ウエッジ球(8v300mA)×3個
  →交換用電球はアマゾンで自動車用12v仕様のT10ウエッジLEDを調達
  →BORDAN T10 LED ホワイト 車検対応 10SMD 12V 1.2W 色温度6000
  →既存の電球を外して付け替えるだけでお手軽ですが、
  →T10タイプでも全長が大きいと透明アクリルに納まらないので注意

 ・メーター照明:直径4mmの麦球(8v100mA)×2個
  →単発のLEDだと点照明になってしまうのでLEDテープを使用
  →アマゾンで調達した12v用の白色LEDテープ(5m)、非防水タイプ
  →テープ幅7mm、1m当たり60個のLED素子(2835)、5mで300個のLED素子
  →L字アングル(10mm×10mm)長さ11cm、点灯素子6個の位置でカット
  →LEDテープ端子に電線をハンダ付けし熱収縮チューブを巻いて保護
  →底板側からアングルをメーターにセットし両面テープで固定

 ・ラグ板上に小さな専用電源回路(半整流+電解コンデンサ)を製作
  →電源スイッチの後ろにある小さな基板横にネジ止め固定
  →電源トランスから出ている青線AC8.6v が DC+10.6v になりました
  →窓照明用のホワイトLEDにはこのDC10.6vを直結
  →メーター照明LEDテープには220Ω制限抵抗を挟んで接続
  →実測電流 窓照明 39mA、メーター照明 7mA

F700led19F700led311F700led25_20240818083401F700led31_20240818083401F700led21
F700led306

■照明LED化いろいろ-----------------------------------------

 ・オリジナル電球、電球色LED、白色LED、アンバー色LEDを比較した結果
 ・発色の異なるLED電球を変えれば雰囲気を変えることが出来ます
 ・いろいろ試しましたが白色LEDが落ち着くように思えてきました
 ・上から<オリジナル電球> <電球色LED> <白色LED> <アンバー色LED>

F700originalF700warmwhiteF700whiteF700amber

note:BLUESS Laboratory

2024年8月11日 (日)

SONY ST-S333ESG 修理調整記録11

 ・2024年6月、FM受信不能という333ESGがやって来ました
 ・調べてみるとあちこち不具合がある個体でした
 ・以下、復活までの作業記録です

Esg04_20240811085801

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 SONY ST-S333ESG ¥49,800(1989年発売)
 ・1987年10月発行「SONY ES テクノロジーカタログ」

Esg02_20240811085901Esg11

■動作確認--------------------------------------------------

 ・FMアンテナを接続して電源オン
 ・表示部点灯OK、文字欠けや輝度劣化は感じられない
 ・IF BANDやRF切換などボタン操作に応じてインジケーター点灯OK
 ・オート選局でFM局を受信しようとすると、すべて素通りして受信不能
 ・マニュアル選局でMUTINGオフにするとかろうじて受信可能
 ・この状態でシグナルインジケーターが僅かに点灯、STEREO点灯せず
 ・一方AMは付属ループアンテナで正常に受信OK
 ・問題はFM部、受信感度が大幅に低下しているようです

■内部点検--------------------------------------------------

 ・まず最初にすべてのヒューズ抵抗を確認 → 顕著な劣化部品なし
 ・FM同調点調整 → IC251(LA1235)7pin~10pin間電圧計セット
  ・83MHz受信 → IFT251調整 → 電圧ゼロ
  ・ところがIFT251を回しても電圧が全く変化しない
  ・内部コンデンサーが完全に容量抜けしているようです
  ・まずはココから対策を始めます

Esg19Esg20

■修理記録:IFT251------------------------------------------

 ・IFT251を取り外して内側を確認
 ・内蔵コンデンサーが真っ黒に変色していました
 ・これを除去し、セラミックコンデンサ(101)を外付け
 ・再度FM同調点を調整したところ電圧ゼロに設定できました
 ・シグナルインジケーターが点灯しオート選局できるようになりました
 ・しかし出てくる音が、何とも酷い、、
 ・左右分離できておらずセパレーション調整に反応しない

Esg22Esg25

■修理記録:PLL検波回路-------------------------------------

 ・次にPLL検波回路の電源周りを再チェック
 ・ツェナーダイオード D273 の電圧に異常発見、両端電圧が同じです
 ・D273(部品番号 UZL-6L2)
 ・隣にある同型 D274を取り外して電圧測定すると 6.2v
 ・D273,D274 → 新品6.2v品に交換
 ・これでSTEREOインジケーターが点灯してFM音声が出てきました
 ・PLL検波回路 CT271 → 反応が過敏なので新品20pFに交換

Esg32_20240811090201Esg33_20240811090201

■修理記録:その他の定番対策---------------------------------

 ・フロントエンドのトリマコンデンサCT101,CT102,CT103 → 新品交換
 ・アースバーのハンダクラック修正
 ・音声端子、アンテナ端子のハンダクラック修正
 ・メモリ保持用キャパシタC605交換 0.1F/5.5v → 1F/5.5v
 ・タンタルコンデンサC604交換 10uF/6.3v → 10uF/50v

Esg41Esg51Esg53Esg61Esg71

■調整記録--------------------------------------------------

【FM同調点調整】
 ・IF BAND = WIDE
 ・IC251(LA1235)7pin~10pin間電圧計セット
 ・83MHz受信 → IFT251調整 → 電圧ゼロ
【VT電圧調整】
 ・フロントエンド内JW8 電圧計セット
 ・アンテナ入力なし
 ・90MHz → L104調整 → 21.0V±0.2V ※調整前実測21.9V
 ・76MHz → 確認のみ → 8.0V±1.0V ※調整前実測 8.4V
【トラッキング調整】
 ・IF BAND = NARROW
 ・IC251(LA1235) 13pin(又はR261右足)電圧計セット
 ・90MHz受信 → CT101,CT102,CT103 → 電圧最大
 ・76MHz受信 → L101,L102,L103 → 電圧最大
【PLL検波調整】
 ・IF BAND = WIDE
 ・TP201を短絡 ※これによってIF回路をパス
 ・TP271 電圧計セット
 ・IFT272調整 → 電圧ゼロ
 ・CT271調整 → 歪最小 ※Wavespectraにて波形確認
 ・TP201を開放
【IF歪調整】
 ・IF BAND = WIDE
 ・MUTING = OFF
 ・IC251(LA1235) 13pin(又はR261右足)電圧計セット
 ・RV201、RV202 時計回り一杯に回す
 ・SSG出力40dBモノラル信号送信
  ・IFT201調整 → 電圧最大
 ・SSG出力40dBステレオ信号送信
  ・IFT202調整 → 電圧最大
  ・IFT101調整 → 電圧最大 ※IFT101フロントエンド内
 ・RV201、RV202 回転範囲の中央位置に回す
 ・SSG出力80dBモノラル信号送信
  ・IFT203調整 → 歪最小へ
 ・SSG出力80dBステレオ信号送信
  ・IFT204調整 → 歪最小へ
【STEREOインジケータ調整】
 ・IF BAND = WIDE
 ・MUTING = OFF
 ・SSG83MHz 出力20dB
 ・RV251調整 → ステレオインジケータ点灯
【MUTINGレベル調整】
 ・IF BAND = WIDE
  ・MUTING = ON
  ・SSG83MHz 出力25dB
  ・RV252調整 → MUTING調整
【IF NARROWゲイン調整】
 ・IF BAND = NARROW
  ・RV203調整 → NARROWゲイン調整
【Sメーター調整】
 ・RV241調整
【パイロットキャンセル】
 ・RV303、L301 19kHz信号漏れ最小 左右バランス確認
【セパレーション調整】
 ・RV301 R→L ※調整後実測66dB
 ・RV302 L→R ※調整後実測64dB
【CAL TONE】
 ・Peak Level-4.2dB 391Hzの波形が出ていました
【AM調整】
 ・RV401 Sメーター調整
 ・RV402 AUTOSTOP調整

Esg70

■試聴------------------------------------------------------

 ・あちこち不具合がありましたが何とか復旧できました
 ・ツェナーダイオードの故障事例もどうやら定番と言えそうです

Esg06_20240811085801

 →note:BLUESS Laboratory

2024年8月 4日 (日)

TRiO KT-990 修理調整記録11

 ・2024年2月、研究材料として故障機を寄付していただきました
 ・フロントパネルが前傾している、FMを全く受信できない
 ・この機種定番の不具合症状が満載状態でした
 ・以下、復活までの作業記録です

Kt99003_20240804090801

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 TRIO KT-990 ¥53,800円(1982年発売)

Kt99002_20240804090601Kt99022_20240804090601

■動作確認--------------------------------------------------

 ・外観は経年の汚れ、天板に目立つ擦り傷あり
 ・電源オン、フロントパネル照明点灯、指針照明点灯、電球切れは無い
 ・選局ツマミを回すと回転フィーリングがかなり重い
 ・原因はフロントパネルが前傾して選局ツマミと接触していること
 ・これはKT-990/KT-900で頻繁に遭遇する不具合事例です
 ・フロントパネルを指で支えながら名古屋地区のFM局を受信テスト
 ・82.5MHzのNHK-FM(名古屋)を80.2MHz付近で受信
 ・ズレた位置でSメーター点灯、Tメーターインジケーター点灯
 ・ただサーボロックランプ点灯しない、STEREOランプも点灯しない
 ・MUTINGオフで指針を移動すると局間ノイズに激しい雑音が混入する
 ・バリコン軸の軸受部が錆びついている感じです
 ・適当なAMループアンテナを接続して名古屋のAM局を受信テスト
 ・Sメーターがフル点灯しAM放送を受信OK

■内部確認--------------------------------------------------

 ・フロントパネルが前傾する原因は重量級アンプ等を上に載せたこと
 ・重量に耐え切れずフロントパネルとボディを繋ぐプラ部品が破損
 ・これはKT-900/KT-990定番の破損個所なので修復可能
 ・次にフロントエンド内のトリマコンデンサを仮調整で回したところ、
 ・残念ながら全く反応なし、トリマコンデンサは完全に死んでいました
 ・バリコン回転軸の軸受部が緑青色に変色してノイズ源になっています

■修理記録:フロントパネル補修(プラスチック溶接)----------

 ・経験を重ねてプラスチック溶接の腕前がだいぶ上がってきました
  ・破損部分を瞬間接着剤で仮止め
  ・破断位置を跨ぐようにホッチキス針を置く
  ・針はM字型に曲げて使うとより効果的
  ・ハンダ鏝を針に押し当てプラスチックの内部に溶かし込む
  ・溶けたプラスチックを出来るだけ平らにならす
  ・最後に研磨して仕上げる
 ・20Wクラスのハンダ鏝ならこて先が細いので使い勝手が良いです
 ・プラスチックの厚みが2mmほどしかないので作業は慎重に!
 ・熱を加えすぎると裏面(上部から見える面)に変形が及んでしまいます
 ・出来上がり具合は上々です

Kt99055_20240804090601Kt99056_20240804090601

■修理記録:OSCトリマコンデンサ交換-------------------------

 ・基板裏側ハンダ面を見るとトリマコンデンサ付近に穴が開いています
 ・トリマ位置とは少しズレますが半田ごてをそっと挿入すれば届きます
 ・古いトリマを取り外し、新トリマ(10pF)に交換しました
 ・後述の受信調整で周波数ズレは解消しました

Kt99031_20240804090701Kt99034_20240804090701

■修理記録:バリコン軸洗浄----------------------------------

 ・MUTINGオフで指針を移動すると激しいバリバリ音が発生する原因です
 ・目に見える範囲の緑青サビを爪楊枝の先端で削ぎ落す
 ・次にエレクトロニッククリーナーを噴射して何度か回転させる
 ・100均で買った歯間ブラシ(SSサイズ)で軸受け部を清掃
 ・これを何度か繰り返して清掃完了
 ・最後にエアダスターを噴射して乾燥させてからCRC556を少量塗布
 ・76~90MHz区間を何度も往復して馴染ませて作業完了

Kt99041_20240804090701Kt99042_20240804090701

■受信調整--------------------------------------------------

【FM OSC調整】
 ・TR7020-2Pin(R18右足) → 電圧計セット(Sメーター電圧)
 ・83MHz 受信 → TC4調整 → 電圧最大
【FM RF調整】
 ・TR7020-2Pin(R18右足) → 電圧計セット(Sメーター電圧)
 ・83MHz 受信 → TC1,TC2,TC3調整 → 電圧最大
 ・83MHz 受信 → T1調整 → 電圧最大
【クアドラチュア検波調整】
 ・TP1~TP2 → 電圧計セット(Tメーター)
 ・83MHz 受信 → L4調整 → 電圧ゼロ(Tメーター中点)
【WIDE GAIN調整】
 ・TR7020-2Pin → 電圧計セット(Sメーター電圧)
 ・83MHz Narrow受信 → Sメーター電圧記録
 ・83MHz Wide受信 → VR1調整 → 上記電圧と同じ
【高調波歪調整】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz → T1(フロントエンド内)調整 → 高調波歪最小
【パルスカウント検波調整】
 ・TR4011-1Pin → 周波数カウンタセット
 ・83MHz受信 → L6調整 → 1.965MHz
【VCO調整】
 ・TP VCO → 周波数カウンタ接続
 ・SSG 83MHz 無変調 → VR7調整 → 76kHz
【PILOTキャンセル】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz Wide受信 → VR6調整 → 19kHz成分最小
【セパレーション Narrow調整】※Narrow調整を先に行なうこと
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz Narrow → VR3調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【セパレーション Wide調整】
 ・音声出力端子 → WaveSpectra接続
 ・83MHz Wide → VR4調整 → 反対chへの漏れ信号最小
 ・83MHz Wide → VR5調整 → 反対chへの漏れ信号最小
【REC CAL調整】
 ・83MHz受信 → 出力レベル記録
 ・83MHz受信 → VR2調整 → -6dB設定 ※423Hz
【AM受信調整】
 ・700kHz → L11,L12調整 → Sメーター最大点灯
 ・1400kHz → TC1,TC2調整 → Sメーター最大点灯

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■試聴------------------------------------------------------

 ・今回もいい感じに仕上がりました
 ・特に照明に浮かび上がる強化ガラス製フロントパネルが美しい
 ・薄暗い部屋でボーっと眺めていると幸せに浸れます

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note:BLUESS Laboratory

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