YAMAHA TX-2000 修理調整記録7
・2024年5月、TX-2000の故障機が届きました
・Narrow受信時の不調原因はFEのセラミックフィルター劣化でした
・その他いろいろ不具合を解消した作業記録です
■製品情報--------------------------------------------------
・オーディオの足跡 YAMAHA TX-2000 ¥100,000(1988年発売)
・Hifi Engine YAMAHA TX-2000 AM/FM Stereo Tuner (1988-92)
■動作確認--------------------------------------------------
【提供者様からの事前情報】
・モードボタンで切替しないとステレオ表示しない
・ステレオ感がない
・シグナルメーターが40%に満たない
【当方での確認事項】
・外観に目立つ傷なし、フロントパネルもキレイな状態
・アンテナを接続して電源オン、表示部が鮮やかなオレンジ色に輝く
・名古屋地区のFM局で受信テスト開始
・Wide受信でオート選局上り方向-0.2MHz、下り方向でー0.1MHzズレて停止
・ズレた周波数でSTEREOインジケーター点灯
・シグナルインジケーターはWide受信時では半分程度点灯するが
・Narrow受信に切り換えるとほとんど点灯せずオート選局は不可
・アンテナ端子A/Bを切り換えるときに一時的に受信不能になる
・AMは手持ちの適当なループアンテナを接続して受信確認
・名古屋地区のAM放送局をオート選局で正常に受信OK
・FMは受信感度低下とNarrow受信時のノイズ問題、AMは大きな問題はなさそう
■調整記録--------------------------------------------------
・海外版サービスマニュアルを一部アレンジ。
【本体設定】
・電源投入から5分以上経過していること
・OSCコイル、IFTの調整には金属製ドライバーは使用しないこと
・まずFMセクションを調整し、次にAMセクションを調整すること
・MODE:AUTO ST
・BLEND:OFF
・IF MODE:Wide
・RF ATT:OFF
・オーディオ出力をWaveSpectra接続
【電圧確認】
・+30 → +29V±1V → ※実測+28.6V
・+12 → +12.5V±0.5V → ※実測+12.0V
・-12 → -12.5V±0.5V → ※実測-11.9V
・+ 6 → + 6V±0.5V ※実測+6.0V
【VT電圧確認】
・L17の足に DC電圧計接続
・受信周波数 90.0MHz → T8調整 → 24.9V
・受信周波数 76.0MHz → 7.3V ※確認のみ
【レシオ検波調整】
・FINE TUNING ON → すなわちCSL停止状態
・基板上のFM S端子~GND間にDC電圧計セット
・83.00MHz受信 → T7調整 → 電圧ゼロ
【FMフロントエンド調整】
・VR10の足 DC電圧計セット
・76.00MHz受信 → T1,T2,T3,T4調整 → 電圧最大
・90.00MHz受信 → VC1,VC2,VC3,VC4調整 → 電圧最大
★VC1~VC4の反応が過敏で最大値が決まらない
【モノラル歪調整】
・固定出力端子をWaveSpectra接続
・83.00MHz(mono)受信 → VC5,VR9調整 → 高調波歪最小
【PLL入力位相調整】
・83.00MHz(SUB)受信 → T10,T12調整 → Lch出力最大
【ステレオ歪調整】
・IF MODE:Narrow
・83.00MHz(stereo) → VR3,4,5,6調整 → 高調波歪最小
【ステレオ歪調整】
・IF MODE:Wide
・83.00MHz(stereo) → T5,6,13,VR1,2,7,8調整 → 高調波歪最小
【IF オフセット調整】
・FINE TUNING OFF → すなわちCSL受信状態
・D4~K3を短絡
・83.00MHzの表示が「30.0」という表示に変わる。
・VR17調整 → 周波数表示を微調整
・調整後はD4~K3を開放
※D4~K3を短絡すると登録したメモリー内容がリセットされる
【セパレーション調整】
・IF MODE:Wide
・83.0MHz(stereo) → VR13調整 → L→R漏れ信号最小
・83.0MHz(stereo) → VR14調整 → R→L漏れ信号最小
【セパレーション調整】
・IF MODE:Narrow
・83.0MHz(stereo) → VR11調整 → L→R漏れ信号最小
・83.0MHz(stereo) → VR12調整 → R→L漏れ信号最小
★Narrow受信時はステレオ分離できない!
★R信号のみ、L信号のみを送信すると激しい共振音が聞こえる
【パイロット信号キャンセル調整】
・IF MODE:Wide
・83.0MHz(stereo) → VR15,T11調整 → 19kHz成分最小
・左右chのバランスに注意
【シグナルメーター調整】
・IF MODE:Wide
・83.0MHz(stereo)80dB → VR10調整 → レベルメーター全灯
★VR10全開にしても半分程度しか点灯しない
【ブレンドチェック】
・受信中にBLENDスイッチON
・セパレーション値が左右とも悪化することを確認
AM部
【VT電圧確認】
・ 522kHz受信 → L17電圧=3.3V ※確認のみ
・1620kHz受信 → L17電圧=24.0V ※確認のみ
【RF、IF調整】
・1053kHz受信(名古屋CBCラジオ)→ PK1調整 → Sメーター最大
・1053kHz受信(名古屋CBCラジオ)→ T9調整 → Sメーター最大
■修理記録:トリマコンデンサ交換----------------------------
・Wide受信時にシグナルメーターが半分程度しか点灯しない
・上記調整過程でトリマコンデンサ(VC1,VC2,VC3,VC4)が怪しい感じ
・調整時の反応が過敏で最大電圧が分かり難い状態です
・そこで4個とも10pFの新品に交換してみました
・再調整したところ最大電圧がピシッと決まりました
・Wide受信時のシグナルインジケーターがフル点灯になりました
■修理記録:アンテナ切換回路--------------------------------
・アンテナ端子A/Bを切り換えるときに一時的に無信号状態になる
・対策として該当するトランジスタ2個を交換しました
・Q32,Q33:2SA1317S → 2SA1015GR
・切換時の動作が安定したと思います
■修理記録:Narrow回路--------------------------------------
・上記修理と調整でWide受信時の動作は正常化しました
・ところがNarrow受信に切換えると受信感度低下及びステレオ分離不可に
・またR信号のみ、L信号のみを送信すると激しい共振音が出てきます
・対策としてまずIF BANDを切り換える回路のトランジスタ3個交換
・Q27,Q28:2SC3330S → 2SC1815GR
・Q29:2SA1317S → 2SA1015GR
・アンテナ端子の件もあったので期待しましたが、残念ながら効果なし
・続いて信号発生器で10.7MHz信号を生成してNarrow回路の各段に直接注入
・結果、故障部品はNarrow回路のセラミックフィルター CF3 でした
・セラミックフィルターの新品は手持ちがないのでジャンク機から移植
・CF3 → SANSUI TU-α707 Narrow回路から移植
・交換後はWide受信と同レベルまでシグナルインジケーターが点灯
・セパレーション調整でステレオ分離も正常化しました
・この結果を踏まえて同型部品のCF2も予防交換しておきました
・CF2 → SANSUI TU-α707 Narrow回路から移植
■試聴------------------------------------------------------
・上記修理後に再度調整して作業完了しました
・フロントエンドのセラミックフィルターの故障は珍しいケースです
・これまでの経験の中でたぶん2例目だと思います
・1例目はこちら → LUXMAN T-110 修理調整記録4
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