フォト
2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

チューナー関連リンク

« 2024年8月 | トップページ | 2024年10月 »

2024年9月の記事

2024年9月29日 (日)

PIONEER F-777 修理調整記録

 ・2024年7月、F-777の故障機が届きました
 ・チューニングノブが固くて重くて、とにかく回せないそうです
 ・バリコンチューナーで時々遭遇する事例ですが、シンセ式でも?
 ・以下、作業記録です

F77712

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 PIONEER F-777 ¥55,000(1992年発売)
 ・オーディオ懐古録 PIONEER F-777 ¥55,000
 ・Hifi engine Pioneer F-777 AM/FM Stereo Tuner (1992)

F77702F77720

■動作確認--------------------------------------------------

 ・本体、リモコン、AMループアンテナ、取扱説明書が揃っていました
 ・本体両サイドの飾り板が欠品ですが全体に傷も少なく状態は良好です
 ・FM/AMアンテナを接続して名古屋地区の放送局で受信テスト開始
 ・事前情報通りチューニングツマミが固くて回せません
 ・代わりに周波数の<-><+>ボタンを操作してテスト続行
 ・オート選局で名古屋地区のFM局を受信できました
 ・周波数ズレなし、STEREOランプ点灯、IF BAND切換OK、MUTING動作OK
 ・シグナルインジケータが50%ほど点灯、ちょっと低めかな?
 ・リモコン操作でもオート選局が動作することを確認
 ・チューニングツマミを強引に回して周波数が変化することを確認
 ・メモリボタン操作時に接触が悪いタクトスイッチがいつくかあり
 ・次にAM局の受信テスト、名古屋地区のAM局をすべて受信OKでした
 ・名古屋ではAM局ではステレオ放送は既に終了しています
 ・もはや本機のSTEREOランプは点灯することは無いのですが
 ・AMステレオ対応の信号発生器 KIKUSUI KSG4310 で実験すると
 ・AM受信時にSTEREOインジケーター点灯しました
 ・チューニングツマミが固い以外は動作に問題はないようです。

F77762

■内部確認-------------------------------------------------

 ・IF BAND=Normal → Wide
 ・IF BAND=Super Narrow → Narrow
 ★以下のTPとVRの使い方が分かりません
 ・TP204 VREF
 ・TP205 T-METER
 ・TP208 3DC KILLER
 ・TP209 3D AC BAL
 ・VR208

F77700

■修理記録:チューニングツマミの固着-----------------------

 ・リモコンや本体の周波数<-><+>ボタンで直接操作できるので
 ・そもそもシンセ式チューナーに回転ツマミは不要だと思うのですが、、
 ・さて、バリコン式チューナーでツマミが固い原因は回転軸の固着です
 ・シンセ式チューナーの場合はローターリーエンコーダーの回転軸
 ・念のためフロントパネルを分解してエンコーダー全体像を確認
 ・やはりエンコーダーの回転軸が固着しています
【対策】
  →チューニングツマミを上にして本体を縦置き固定
  →回転軸周囲を養生してから回転軸の隙間に無水アルコール注入
  →注入というより、回転軸の隙間を無水アルコールで浸す感じです
  →養生にはイヤホンの付属品で余っている「イヤパッド」を活用します
  →イヤパッドを裏返しにして回転軸に被せます
  →裏返したイヤパッドをめくると軸に張り付いた「お椀」が完成
  →このお椀に無水アルコールを入れて回転軸の隙間を水没させる
  →しばらく放置すると固着状態が解消されて軸が回転するようになります
  →回転軸先端にマイナスドライバーをセットしてゆっくり回す
  →乾燥した後は仕上げに隙間に潤滑剤シリコンスプレー注入
 ・チューニングツマミは軽やかに回転するようになりました
 ・回転に伴って周波数が上下に変化することを確認しました

F77741F77743F77746F77748F77750

■修理記録:タクトスイッチ洗浄------------------------------

 ・フロントパネルを分解したついでにタクトスイッチを洗浄しました
 ・反応が鈍かったスイッチにエレクトロニッククリーナーを噴射
 ・スイッチON/OFFを各50回ほど繰り返しておきました
 ・反応は復活したと思います

F77745

■調整記録--------------------------------------------------

 ・回路構成の良く似たF-757を参考にして手順を組み立てました

【電圧確認】
 ・TP501(+ 5v)→+4.93v
 ・TP703(+13v)→+12.9v
 ・TP709(+26v)→+24.9v
【FM OSC調整】
 ・アンテナ入力なし、IF BAND=Normal
 ・TP1 → 電圧計セット
 ・90.0MHz → L18調整 → 21.0v±0.1v
 ・76.0MHz → 確認のみ→ 7.6v±0.5v
【FM同調点仮調整】
 ・IF BAND=Normal
 ・TP201-TP202 → 電圧計セット
 ・83.0MHz受信 → T201(前)コア調整 → 電圧0v±100mv
【RFトラッキング調整】
 ・IF BAND=Normal
 ・TP210-GND → 電圧計セット ※Sメーター電圧
 ・76.0MHz受信 → L1,T1,T2調整 → 電圧最大
 ・90.0MHz受信 → TC1,TC2,TC3調整 → 電圧最大
 ・上記手順を数回繰り返す
【IF調整】
 ・IF BAND=Super Narrow
 ・TP210-GND → 電圧計セット ※Sメーター電圧
 ・83.0MHz受信 → T3,T101,T102,T103,T104調整 → 電圧最大
 ・上記手順を数回繰り返す
 ★T102を調整しようとすると受信音が消失する
 ★正確にはT102に下向きの力が加わると信号消失するような?
 ★T102のハンダクラックか?
【FM検波調整】
 ・IF BAND=Normal
 ・TP201-TP202 → 電圧計セット
 ・音声出力 → Wavespectra接続
 ・83.0MHz受信 → T201(前)コア調整 → 電圧0v±100mv
 ・83.0MHz受信 → T201(後)コア調整 → 高調波歪最小
 ・83.0MHz受信 → VR201調整 → 高調波歪最小
 ・上記手順を数回繰り返す
【SUB Balance調整】
 ・IF BAND=Normal
 ・TP203 → AC電圧計セット
 ・83.0MHz受信 → VR205調整 → AC電圧最小
【VCO調整】
 ・TP601~GND → 周波数カウンタ接続
 ・83.0MHz無変調 → VR601調整 → 38kHz±100Hz
【パイロットキャンセル調整】
 ・音声出力 → Wavespectra接続
 ・83.0MHzPilot → VR602調整 → 19kHz成分最小
【SUB調整】
 ・音声出力 → Wavespectra接続
 ・83.0MHzSUB → L601調整 → Lchレベル最小
【ステレオ歪調整】
 ・音声出力 → Wavespectra接続
 ・83.0MHz → T204調整 → 高調波歪最小
 ・IF BAND=Normal
  ・83.0MHz Lch → VR203調整 → 2次高調波歪最小
  ・83.0MHz Lch → VR209調整 → 3次高調歪波最小
 ・IF BAND=Super Narrow
  ・83.0MHz Lch → VR204調整 → 2次高調波歪最小
  ・83.0MHz Lch → VR210調整 → 3次高調波歪最小
【セパレーション調整】
 ・音声出力 → Wavespectra接続
 ・IF BAND=Normal
 ・83.0MHz Rch → VR206調整 → Lchオーディオ出力最小
 ・83.0MHz Lch → VR207調整 → Rchオーディオ出力最小
【MPX NR/ノイズリダクション調整】
 ・音声出力 → Wavespectra接続
 ・IF BAND=Normal
 ・MPX NRスイッチ ON
 ・83.0MHz Rch → VR301調整 → セパレーション値20dB
 ※VR301反時計回りに全開し、20dBになるまで戻す
【シグナルインジケーター調整】
 ・IF BAND=Normal
 ・83.0MHz,40dB受信 → VR202調整 → インジケーター40dB 
 ・83.0MHz,80dB受信 → VR101調整 → インジケーター80dB
【AM OSC調整】
 ・アンテナ入力なし、IF BAND=Normal
 ・TP1 → 電圧計セット
 ・ 522kHz → L501調整 → 2.0v±0.2v
 ・1629kHz → TC502調整→ 13.8v±0.2v
【AM RF調整】
 ・TP501 → 電圧計セット
 ・ 603kHz → T501調整 → 電圧最大
 ・1395kHz → TC501調整→ 電圧最大
【AM IF調整】
 ・TP501 → 電圧計セット
 ・999kHz → T502調整 → 電圧最大

F77761

■修理記録:T102に触れると音声が消失する件------------------

 ・本機は底面に点検口がないので基板を外して裏返してみました
 ・T102を確認したところハンダ割れは見当たりません?
 ・おかしいな~?、、と思いながら周辺部を見てみると
 ・原因が分かりました! サーミスタ TH101 の足でした
 ・ハンダ付けされたTH101の足が長く残っていました
 ・T102を調整しようとして下向きの力が加わると
 ・基板が僅かに歪んでTH101の長い足がシャーシに接触するんです
 ・ちょうど基板をネジ止めするためにシャーシが盛り上がっている部分
 ・TH101の長い足を切除、TH102の足も長かったので切除しておきました
 ・これでT102に触れても音声が消失する現象は解消しました
 ・基板を裏返したついでにアンテナ端子や音声端子のハンダを確認
 ・特に気になるハンダクラックはありませんでした

F77771F77774F77775F77773

■試聴------------------------------------------------------

 ・リモコンが使えるチューナーは便利で楽チンですね
 ・回転軸が固着して回せなくなっても実害はありません
 ・そもそもシンセチューナーにチューニングツマミは不要に思うのですが

F77710

note BLUESS Laboratory

2024年9月22日 (日)

SONY ST-4950 修理調整記録3

 ・2024年1月に修理調整した個体の再修理を承りました
 ・受信中に常時雑音が発生するようになったそうです
 ・以下、作業記録です

St495003

■製品情報-------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 SONY ST-4950 ¥69,800(1976年頃)
 ・Hifi Engine SONY ST-4950 AM/FM Stereo Tuner (1975-77)<

St495002_20240922084201 St495007_20240922084201

■動作確認--------------------------------------------------

 ・FMアンテナを接続して名古屋地区のFM局で受信テスト開始
 ・電源を接続してスイッチオン、緑色の周波数窓が浮かび上がる
 ・Tメーター中点とSメーター最大が一致してFM局受信OK
 ・STEREOランプ点灯、実際のステレオ感あり、MUTING動作OK
 ・FM受信動作は正常だが、出てくる音に不定期に雑音が混入する
 ・左右chで異なる雑音が聞こえる、雑音レベルはRchが大きい
 ・AM放送は背面バーアンテナで名古屋地区のAM局を受信OK
 ・AM放送受信時も同様の雑音が聞こえる

■修理記録:受信中に常時雑音が発生するようになった----------

 ・調べてみたところ、検波回路~MPX回路までは正常音声でした
 ・原因は、最終オーディオ回路トランジスタのマイグレーション
 ・トランジスタの足が真っ黒に変色する現象です
 ・前回作業時にノイズは気付かなかったのでここは全く未対策でした

St495070

 ・対策としてQ501,Q502,Q503,Q504の足をエレクトロニッククリーナーで洗浄
 ・これによって雑音がキレイに解消しました
 ・その他のトランジスタやICも再洗浄しておきました。

■修理記録:バリコン糸のゆるみ対策--------------------------

 ・選局ツマミが空転して指針が移動しないことがあるそうです
 ・バリコン糸を確認したところ、張力が弱く時々空回りする状態でした
 ・本来は糸を解いて張り直すところですが、この作業は大変なので、、
 ・代案としてバリコン軸のプーリーにちょっと細工を施しました
 ・爪楊枝のアタマ部分を切り取って糸の下に挟み込む方法です
 ・これによって糸の張力が回復して指針がスムーズに動くようになりました

St495080

■調整記録-------------------------------------------------

 【レシオ検波調整】
 ・アンテナ入力なし → IFT201左コア調整 → Tメーター中点
 【FM OSC調整】
 ・ダイヤル指針を周波数目盛り83位置にセット
 ・83MHz受信 → CT104調整 → Sメーター最大
 【FMトラッキング調整】
 ・76MHz受信 → L101,L102,L103調整 → Sメーター最大
 ・90MHz受信 → CT101,CT102,CT103調整 → Sメーター最大
 ・83MHz受信 → IFT101調整 → Sメーター最大
 【検波歪調整】
 ・音声出力をWaveSpectraで観測
 ・83MHz受信 → IFT201右コア調整 → 高調波歪最小
 【ミューティング調整】
 ・83MHz受信 → RT201調整 → ミューティング作動レベル調整
 ・83MHz受信 → RT203調整 → ミューティングバランス調整 ※
 ※バランス調整
  作動すポイントをTメーター左右対称になるように調整
 【Sメーター振れ調整】
 ・83MHz受信 → RT202調整 → Sメーター最大振れ調整
 【VCO調整】
 ・TP(19kHz) → 周波数カウンタ接続
 ・アンテナ入力なし → RT301調整 → 19kHz
 【セパレーション調整】
 ・83MHz受信 → RT501調整 → 左右chの漏れ信号最小
 【オーディオレベル調整】
 ・RT302、RT303 左右信号レベルを揃える。
【AM調整】
 ・ダイヤル指針を600kHz位置にセット
 ・600kHz受信 → L402調整 → Sメーター最大
 ・600kHz受信 → バーアンテナ内L801調整 → Sメーター最大
 ・ダイヤル指針を1400kHz位置にセット
 ・1400kHz受信 → CT402調整 → Sメーター最大
 ・1400kHz受信 → CT401調整 → Sメーター最大

St495060_20240922084101

■試聴-----------------------------------------------------

 ・緑色に浮かび上がる周波数窓とふたつのメーターがイイ感じです
 ・赤く光るダイヤル指針がワンポイントアクセントで好印象
 ・古い機種のなので定期的なメンテが必要です

St495005_20240922084101

■→note BLUESS Laboratory

2024年9月15日 (日)

Aurex ST-F15

 ・2024年6月、オーレックスST-F15を寄付していただきました
 ・これはオーディオタイマーか? と錯覚する小さなボディです
 ・初めて触れる機種なので興味津々、、
 ・以下、内部点検から調整整備までの記録です

Stf1504

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 Aurex ST-F15/ST-F15K ¥62,000(1978年頃)
 ・ST-F15K → ブラックモデル
 ・Hifiengine Toshiba ST-F15 Digital Synthesizer FM Stereo Tuner

Stf1502Stf1513

■動作確認--------------------------------------------------

 ・幅257x高54x奥行196mm、Technics製コンサイスコンポ並みのミニサイズ
 ・小さなサイズの割に重量が2.2kgとズッシリ重い
 ・シンプルなフロントパネルには小さな操作ボタンが整然と配置される
 ・リアパネルはさらに超シンプルでアンテナと音声端子のみ
 ・そうか、FM専用機だからAMアンテナ端子は無いんだ、、
 ・さて、FMアンテナを接続して電源オン、ディスプレイ部が点灯
 ・[UP][DOWN]ボタンを操作して名古屋地区のFM局を受信できました
 ・シグナルインジケーターフル点灯、STSREOインジケーターも点灯
 ・周波数の数値もインジケーターもすべて緑一色の表示
 ・[REC CAL]ボタンでテストトーンが聞こえる
 ・特に不具合は無さそうです

■選局方法--------------------------------------------------

 ・あれこれ試行錯誤を経て4種類の選局方法を理解しました
 ・特にダイレクト選局が面白い機能です

Stf1505_20240915084001

【マニュアル選局】
 ・[UP][DOWN]ボタンをクリックするびに周波数が上下する
 ・目的の周波数になるまで何度もクリックする
【オート選局】
 ・[AUTO]ボタン押す → AUTO LED 点灯
 ・[UP][DOWN]ボタンワンクリック → オート選局開始
 ・放送局を見つけると自動停止 → AUTO LED 消灯
【ダイレクト選局】
 ・[MANU]ボタン押す → 周波数を直接入力で指定する
 ・[1]~[0]ボタンで希望周波数を入力
 ・例えば[82.5MHz]の場合 → [8][2][5]
【メモリ選局】
 ・[MEMO][AUTO]ランプ消灯状態で[1]~[0]ボタンを押す
 ・ボタンにプリセットされた周波数に同調する

■内部確認--------------------------------------------------

 ・フロントエンド 5連バリキャップ式、コイルとトリマで調整可能
 ・IFバンド切換機能なし
 ・HA11225:クアドラチュア検波
 ・TA7624P:PLL MPX
 ・R120:Sメーター点灯調整
 ・R224:VCO調整
 ・表示部はよくある水色のFL管
 ・それを緑色アクリル板を通して緑色表示にしている

Stf1500

■調整記録--------------------------------------------------

【FM同調点調整】
 ・R113両端 → 電圧計セット
 ・83.0MHz受信 → T101赤コア調整 → 電圧ゼロ
【VT電圧調整】
 ・R014 → 電圧計セット
 ・表示部90.0MHz → C025調整 → 10v
 ・表示部76.0MHz → T006調整 → 3.9v(3.0v~4.0vならOK)
【RF調整】
 ・R120 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
 ・76.0MHz受信 → T001,T002,T003,T004調整 → 電圧最大
 ・90.0MHz受信 → C021,C022,C023,C024調整 → 電圧最大
 ・上記手順を数回繰り返す
【IF調整】
 ・R120 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
 ・83.0MHz受信 → T005調整 → 電圧最大
【検波調整】
 ・TP R113両端 → 電圧計セット
 ・音声出力 → WaveSpectra接続
 ・83.0MHz受信 → T101赤コア調整 → 電圧ゼロ
 ・83.0MHz受信 → T101青コア調整 → 高調波歪最小
 ・上記手順を数回繰り返す
【Sメーター調整】
 ・83.0MHz 60dB受信 → R120調整 → インジケーターフル点灯
【VCO調整】
 ・TP R205 → 周波数カウンター接続
 ・83.0MHz 無変調受信 → R224調整 → 76kHz
 ※76kHzが上手く確認できません
 ※代わりの調整法としてR224を左右に大きく回す
 ※STEREOインジケーターが点灯するR224の範囲を特定する
 ※その範囲の中点にR224を設定する
 ※セパレーション調整VRが無いのが最大の残念ポイント!

Stf1533

■試聴------------------------------------------------------

 ・一見するとオーディオタイマーと見間違えそうな外観ですが
 ・こんな小さなボディに5連バリキャップを詰め込んでいます
 ・さらに外装はぶ厚いアルミ材で包まれて高級感+シンプル感が漂う
 ・さすが、定価62,000円の高級機です

Stf1503

note:BLUESS Laboratory

2024年9月 8日 (日)

ONKYO Integra T-4500

 ・2024年7月、未体験機種の故障機が届きました
 ・ジャンクコーナーで何度か見かけた事があるような気がします
 ・以下、作業記録です

T450003

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 ONKYO Integra T-4500 ¥34,800(1975年頃)

T450002T450015

■動作確認--------------------------------------------------

 ・フロントパネルのプッシュスイッチがちょっと特徴的です
 ・通常はフロントパネルと同一面にあり、操作時は内側に押し込む感じ
 ・ロックするまでストロークが長くて(深くて)最初は戸惑いました
 ・背面にF端子が無いので300Ω変換器を使ってアンテナを接続
 ・電源オン、緑色の周波数窓と二つのメーター照明点灯
 ・名古屋地区のFM局を受信できましたが、STEREOランプ点灯しません
 ・実際のステレオ感も無い、-0.2MHz程度の周波数ズレ、
 ・Sメーター最大点とTメーター中点が一致しない
 ・AMは背面バーアンテナで名古屋のAM局を受信OK
 ・問題は同調点のズレとSTEREOランプの件です

■内部確認--------------------------------------------------

 ・FM3連AM2連のフロントエンド、IF-BAND切換なし
 ・Q102:HA1137 クアドラチュア検波
 ・Q201:HA1156 PLL-MPX
 ・R123:Sメーター振れ具合調整
 ・R202:VCO調整(19kHz)★軽く回したところSTEREOランプ点灯!

T450030

 ・AMはICを用いないディスクリート構成
 ・VRは2個しかなく、セパレーション調整用VRがない
 ・底板は木製、コストを抑えた入門機の感じです

T450021T450022T450024T450025T450026

■調整記録--------------------------------------------------

【Tメーター調整】
 ・アンテナ入力なし
 ・L104(白コア)調整 → Tメーター中点へ
【FM OSC調整】
 ・ダイヤル指針 → 周波数目盛り90位置にセット
 ・90MHz受信 → TCo調整 → Tメーター中点
 ・ダイヤル指針 → 周波数目盛り76位置にセット
 ・76MHz受信 → Lo調整 → Tメーター最大
【FMトラッキング調整】
 ・76MHz受信 → LA,LR調整 → Sメーター最大
 ・90MHz受信 → TCA,TCR調整 → Sメーター最大
 ・83MHz受信 → IF1調整 → Sメーター最大
 ★IF1 → 空芯コイルのためノータッチ
 ★IF2 → 実装なし
【検波調整】
 ・音声出力 → WaveSpectraで観測
 ・83MHz受信 → L104(白コア)調整 → Tメーター中点 ※確認のみ
 ・83MHz受信 → L104(青コア)調整 → 高調波歪最小
【Sメーター振れ調整】
 ・83MHz受信 → R123調整 → Sメーター最大振れ調整
【VCO調整】
 ・TP201 → 周波数カウンタ接続
 ・アンテナ入力なし → R202調整 → 19kHz
【AM調整】
 ・ダイヤル指針→ 600kHz位置にセット
 ・600kHz受信 → L112調整 → Sメーター最大
 ・600kHz受信 → バーアンテナ内コア調整 → Sメーター最大
 ・ダイヤル指針を1400kHz位置にセット
 ・1400kHz受信 → AM1,AM2調整 → Sメーター最大

T450040

■試聴------------------------------------------------------

 ・調整過程でFM受信の不具合は解消しました
 ・緑色照明に映える周波数窓にオレンジ色のSTEREOランプ
 ・バランスが良くてうっとり見ていられます
 ・高性能とはいえないまでもBGM用途なら十分実用になります

T450007

 →note:BLUESS Laboratory

2024年9月 1日 (日)

YAMAHA TX-2000 修理調整記録7

 ・2024年5月、TX-2000の故障機が届きました
 ・Narrow受信時の不調原因はFEのセラミックフィルター劣化でした
 ・その他いろいろ不具合を解消した作業記録です

Tx200005_20240901082601

■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 YAMAHA TX-2000 ¥100,000(1988年発売)
 ・Hifi Engine YAMAHA TX-2000 AM/FM Stereo Tuner (1988-92)

Tx200002_20240901082801Tx200011_20240901082801

■動作確認--------------------------------------------------

【提供者様からの事前情報】
 ・モードボタンで切替しないとステレオ表示しない
 ・ステレオ感がない
 ・シグナルメーターが40%に満たない

【当方での確認事項】
 ・外観に目立つ傷なし、フロントパネルもキレイな状態
 ・アンテナを接続して電源オン、表示部が鮮やかなオレンジ色に輝く
 ・名古屋地区のFM局で受信テスト開始
 ・Wide受信でオート選局上り方向-0.2MHz、下り方向でー0.1MHzズレて停止
 ・ズレた周波数でSTEREOインジケーター点灯
 ・シグナルインジケーターはWide受信時では半分程度点灯するが
 ・Narrow受信に切り換えるとほとんど点灯せずオート選局は不可
 ・アンテナ端子A/Bを切り換えるときに一時的に受信不能になる
 ・AMは手持ちの適当なループアンテナを接続して受信確認
 ・名古屋地区のAM放送局をオート選局で正常に受信OK
 ・FMは受信感度低下とNarrow受信時のノイズ問題、AMは大きな問題はなさそう

Tx200000_20240901082601

■調整記録--------------------------------------------------

 ・海外版サービスマニュアルを一部アレンジ。
【本体設定】
 ・電源投入から5分以上経過していること
 ・OSCコイル、IFTの調整には金属製ドライバーは使用しないこと
 ・まずFMセクションを調整し、次にAMセクションを調整すること
 ・MODE:AUTO ST
 ・BLEND:OFF
 ・IF MODE:Wide
 ・RF ATT:OFF
 ・オーディオ出力をWaveSpectra接続
【電圧確認】
 ・+30 → +29V±1V → ※実測+28.6V
 ・+12 → +12.5V±0.5V → ※実測+12.0V
 ・-12 → -12.5V±0.5V → ※実測-11.9V
 ・+ 6 → + 6V±0.5V ※実測+6.0V
【VT電圧確認】
 ・L17の足に DC電圧計接続
 ・受信周波数 90.0MHz → T8調整 → 24.9V
 ・受信周波数 76.0MHz → 7.3V ※確認のみ
【レシオ検波調整】
 ・FINE TUNING ON → すなわちCSL停止状態
 ・基板上のFM S端子~GND間にDC電圧計セット
 ・83.00MHz受信 → T7調整 → 電圧ゼロ
【FMフロントエンド調整】
 ・VR10の足 DC電圧計セット
 ・76.00MHz受信 → T1,T2,T3,T4調整 → 電圧最大
 ・90.00MHz受信 → VC1,VC2,VC3,VC4調整 → 電圧最大
★VC1~VC4の反応が過敏で最大値が決まらない
【モノラル歪調整】
 ・固定出力端子をWaveSpectra接続
 ・83.00MHz(mono)受信 → VC5,VR9調整 → 高調波歪最小
【PLL入力位相調整】
 ・83.00MHz(SUB)受信 → T10,T12調整 → Lch出力最大
【ステレオ歪調整】
 ・IF MODE:Narrow
 ・83.00MHz(stereo) → VR3,4,5,6調整 → 高調波歪最小
【ステレオ歪調整】
 ・IF MODE:Wide
 ・83.00MHz(stereo) → T5,6,13,VR1,2,7,8調整 → 高調波歪最小
【IF オフセット調整】
 ・FINE TUNING OFF → すなわちCSL受信状態
 ・D4~K3を短絡
 ・83.00MHzの表示が「30.0」という表示に変わる。
 ・VR17調整 → 周波数表示を微調整
 ・調整後はD4~K3を開放
 ※D4~K3を短絡すると登録したメモリー内容がリセットされる
【セパレーション調整】
 ・IF MODE:Wide
 ・83.0MHz(stereo) → VR13調整 → L→R漏れ信号最小
 ・83.0MHz(stereo) → VR14調整 → R→L漏れ信号最小
【セパレーション調整】
 ・IF MODE:Narrow
 ・83.0MHz(stereo) → VR11調整 → L→R漏れ信号最小
 ・83.0MHz(stereo) → VR12調整 → R→L漏れ信号最小
★Narrow受信時はステレオ分離できない!
★R信号のみ、L信号のみを送信すると激しい共振音が聞こえる
【パイロット信号キャンセル調整】
 ・IF MODE:Wide
 ・83.0MHz(stereo) → VR15,T11調整 → 19kHz成分最小
 ・左右chのバランスに注意
【シグナルメーター調整】
 ・IF MODE:Wide
 ・83.0MHz(stereo)80dB → VR10調整 → レベルメーター全灯
★VR10全開にしても半分程度しか点灯しない
【ブレンドチェック】
 ・受信中にBLENDスイッチON
 ・セパレーション値が左右とも悪化することを確認

AM部
【VT電圧確認】
 ・ 522kHz受信 → L17電圧=3.3V ※確認のみ
 ・1620kHz受信 → L17電圧=24.0V ※確認のみ
【RF、IF調整】
 ・1053kHz受信(名古屋CBCラジオ)→ PK1調整 → Sメーター最大
 ・1053kHz受信(名古屋CBCラジオ)→ T9調整 → Sメーター最大

Tx200050

■修理記録:トリマコンデンサ交換----------------------------

 ・Wide受信時にシグナルメーターが半分程度しか点灯しない
 ・上記調整過程でトリマコンデンサ(VC1,VC2,VC3,VC4)が怪しい感じ
 ・調整時の反応が過敏で最大電圧が分かり難い状態です
 ・そこで4個とも10pFの新品に交換してみました
 ・再調整したところ最大電圧がピシッと決まりました
 ・Wide受信時のシグナルインジケーターがフル点灯になりました

Tx200021_20240901082901Tx200022_20240901082901

■修理記録:アンテナ切換回路--------------------------------

 ・アンテナ端子A/Bを切り換えるときに一時的に無信号状態になる
 ・対策として該当するトランジスタ2個を交換しました
  ・Q32,Q33:2SA1317S → 2SA1015GR
 ・切換時の動作が安定したと思います

Tx200033_20240901082901Tx200036_20240901082901

■修理記録:Narrow回路--------------------------------------

 ・上記修理と調整でWide受信時の動作は正常化しました
 ・ところがNarrow受信に切換えると受信感度低下及びステレオ分離不可に
 ・またR信号のみ、L信号のみを送信すると激しい共振音が出てきます
 ・対策としてまずIF BANDを切り換える回路のトランジスタ3個交換
  ・Q27,Q28:2SC3330S → 2SC1815GR
  ・Q29:2SA1317S → 2SA1015GR
 ・アンテナ端子の件もあったので期待しましたが、残念ながら効果なし

Tx200032_20240901083001Tx200035_20240901083001

 ・続いて信号発生器で10.7MHz信号を生成してNarrow回路の各段に直接注入
 ・結果、故障部品はNarrow回路のセラミックフィルター CF3 でした
 ・セラミックフィルターの新品は手持ちがないのでジャンク機から移植
  ・CF3 → SANSUI TU-α707 Narrow回路から移植
 ・交換後はWide受信と同レベルまでシグナルインジケーターが点灯
 ・セパレーション調整でステレオ分離も正常化しました
 ・この結果を踏まえて同型部品のCF2も予防交換しておきました
  ・CF2 → SANSUI TU-α707 Narrow回路から移植

Tx200030_20240901083101Tx200042_20240901083101
Tx200045_20240901082701

■試聴------------------------------------------------------

 ・上記修理後に再度調整して作業完了しました
 ・フロントエンドのセラミックフィルターの故障は珍しいケースです
 ・これまでの経験の中でたぶん2例目だと思います
 ・1例目はこちら → LUXMAN T-110 修理調整記録4

Tx200003_20240901082601

 →note:BLUESS Laboratory

« 2024年8月 | トップページ | 2024年10月 »