Marantz ST-50
・2024年9月、ST-50のゴールドモデルが届きました
・FM/AMとも全く受信しないそうです
・以下、作業記録です
■製品情報-------------------------------------------------
・オーディオの足跡 Marantz ST-50 ¥38,000(1991年頃)※ゴールドモデル
・オーディオの足跡 Marantz ST-50BL ¥35,000(1989年頃)※ブラックモデル
・Hifiengine Marantz ST-50 Synthesized FM/AM Stereo Tuner (1989-93)
■動作確認-------------------------------------------------
・持ち上げるとズッシリ重くて、ちょっと驚きます
・外観に目立つキズは無くとてもキレイな状態
・フロントパネルのデザインは飾り気が無くてとてもシンプルです
・FMアンテナはF端子がA/B 2系統リレー切換式の本格タイプです
・とりあえずA端子に同軸ケーブルを接続して受信テスト開始
・表示部にFM周波数が浮かび上がる、文字欠けや文字痩せはない
・IF BAND切換(WIDE/NARROW)OKだが、
・オート選局では上り、下り方向とも周波数は変化するが、
・すべてのFM局を素通りして受信不可
・マニュアル受信に切り換えてもすべてのFM局を受信できません
・シグナルインジケーターは全く点灯しない
・そもそも局間ノイズも聞こえない、完全な無音状態です
・続いて適当なAMループアンテナを接続してAM受信テスト開始
・AM放送も全く受信不可でした
・周波数はアップダウンしますが、局間ノイズも聞こえません
・FM/AMとも受信不可なので電源系統の問題か?
■内部確認--------------------------------------------------
・まずボディ両側の「サイドウッド」を外して驚いたことは、
・「木製のサイドウッド」ではなく「金属製サイドウェイト」でした
・両側2個で合計約3kgの重量があります、そりゃ重いわけだ、、
・オーディオの足跡では「ダイキャストサイドパネル」との記述あり
・ブラックモデルの定価より3,000円高いのはこの重さのせいですね
・側面に見える丸いゴムキャップを外すと取り付けネジが見えます
・サイドウェイトを外すと片手で持てるほどの軽量ボディでした
・基板はボディ後方半分ほどの面積に収まって内部はスカスカ
・底面に点検口が無いので部品交換は基板を取り外す必要あり
・FMフロントエンドはミツミ製パッケージ
・Q201:LA1266 AM/FM Tuner System
・Q301:LA3450 PLL FM MPX Stereo Demodulator
・さらによく見るとL202のレシオ検波回路があります
・LA1266のクアドラチュア検波は使っていません
・FM/AMともに受信不能なのでまず電源系統のチェックからスタート
■修理記録:C314(100uF/16v)交換----------------------------
・Q801 +12v → 12.1v ※OK
・Q802 +5.6v → 5.6v ※OK
・電源回路に異常なし
・続いて各ICのVccをチェックしたところQ301で異常値に遭遇
・Q301(LA3450)-28pin → 12v ※正常
・Q301(LA3450)-27pin → 0v ★異常 (規定値5.5v)
・原因はQ301(LA3450)-27pin に繋がるC314(100uF/16v)短絡でした
・C314(100uF/16v) → (100uF/50v) 新品交換
・この交換によってQ301が動き出し、FM音声が出るようになりましたが
・ただし音声が出るのはMutingオフ時のみ
・シグナルインジケーター点灯せず、ひどい音が聞こえます
・受信感度が極めて弱い状態で受信しているようです
・そしてAM受信に関しては改善効果なし
■修理記録:Q214:(2SA1309A)交換-----------------------------
・さらに調査続行したところFM/AM切換信号が出ていないことが判明
・この原因を辿ったところQ501(LC7218)の横にあるTR故障でした
・Q214(2SA1309A) → 2SA1015GR交換
・これによってAM受信が復旧しました
・ただシグナルインジケーターがFM/AMとも全く点灯しません
・それにFM受信音も酷い音のまま改善効果なし
■修理記録:Q201(LA1266)交換--------------------------------
・シグナルインジケーターが点灯しない原因を探して調査続行
・Q201(LA1266)周辺の電解コンデンサをいくつか交換するも改善効果なし
・これはQ201(LA1266)自体の故障かも?
・ジャンク箱を探したところ KENWOOD KT-5020の基板にLA1266を発見
・試しにこれを取り外してST-50に移植してみました
・結果は、、大正解!!
・FM/AMともシグナルインジケーターがフル点灯、
・まともな受信音が聞こえてきます、、よかった、、ホッ、
・後述の受信調整を経て動作動作が正常化しました
■調整記録--------------------------------------------------
【VT電圧調整】
・フロントエンド右側面 TP-VT → 電圧計セット
・90.0MHz → L104調整 → 11.0v ※実測11.2v
・76.0MHz → 2.6v ※確認のみ
【FM-RF,IF調整】
・ジャンパ線U233 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83.0MHz受信 → L101,102,103調整 → 電圧最大
・83.0MHz受信 → T101調整 → 電圧最大
※トリマコンデンサなし、中空コイルのみで調整は難しい
【Narrow Gain調整】
・ジャンパ線U233 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・83.0MHz受信 → L201調整 → 電圧最大
・83.0MHz受信 → R218調整 → Wide/Narrowで同電圧に
【レシオ検波調整】
・TP J201 → 電圧計セット
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHz受信 → L202前コア調整 → 0v
・83.0MHz受信 → L202後コア調整 → 高調波歪最小
【MUTING調整】
・83.0MHz20dB受信 → R235調整 → MUTING作動位置へ
※20dB以下でMUTINGが作動するように設定しました
※シグナルインジケーターの点灯具合とも連動します
【PILOT信号キャンセル調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHzST受信 → R302調整 → 19kHz成分最小
※左右chのバランス注意
【ステレオ歪(Wide)調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHzST受信 → T101調整 → 高調波歪最小
【セパレーション(Wide)調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHzST受信 → R303 → L/R 漏れ信号最小
【ステレオ歪(Narrow)調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHzST受信 → L201調整 → 高調波歪最小
【セパレーション(Narrow)調整】
・音声出力 → Wavespectra接続
・83.0MHzST受信 → R304 → L/R 漏れ信号最小
【AM-VT調整】
・フロントエンド右側面 TP-VT → 電圧計セット
・1602kHz → LA02調整 → 7.2v ※実測7.5v
・ 531kHz → 1.2v ※確認のみ
【AM-RF,IF調整】
・ジャンパ線U233 → 電圧計セット ※Sメーター電圧
・ 603kHz受信 → LA01調整 → 電圧最大
・1404kHz受信 → CA01調整 → 電圧最大
・ 999kHz受信 → FA01調整 → 電圧最大
■試聴------------------------------------------------------
・故障原因を探すのに時間がかかりましたが直ってよかったです
・3個の部品が同時に壊れたのか、どれかが引き金になったのか、
・原因はよく分かりませんがとにかく復活できて良かったです
・重いサイドウェイトのおかげで外観は高級感があります
・入手するならゴールドモデルをお勧めします
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